貴女は私、私は貴女。
ローレライという強大な後ろ盾を無くした貴女は、何を思うのかしら?
コツリ、コツリ、とブーツの音が響いた。
「何で!何で!何で、私が悪者になるのよっ!!」
嫉妬と憎悪が入り混じった怨嗟の声に私はクツクツと嗤う。
「貴女は私、私は貴女。」
キラキラと光る星の剣(エクスカリバー)は、今か今かと彼女の命を狙っていた。
「愛されたい、注目されたい、傅かれたい、って思ってたんでしょう?」
さっきの威勢はどうしたの?
あぁローレライさえも消し去った剣に怯えるているのね、聖女様。
でもね、私は貴女を赦してないのよ。
「私の世界を、友を、身体を奪った貴女が憎いの。」
座り込んでガクガクと恐怖で身体を硬直させ許しを請う聖女様と目線を合わせた。
「欲しい、欲しい、全部欲しい、って願って手に入れた貴女は、正に私自身だわ!」
ユルリと聖女様の頬を撫でればボロボロと涙を流し
「ごめんなさい、ごめんなさい、死にたくないよぅ…」
命乞いをする。
「何を言ってるの?この世界に来た時点で、私も貴女も一度死んでいるのよ。」
肉体から強制的に魂を切り離し、別の器に押し込んだのだから一度死んでて当然じゃない。
そんな私の言葉に彼女は呆然とした顔をした。
「私から全てを奪って、自分は悪者じゃない?あはははは!私は世紀の大悪党でも良いわよ。神殺しもした!聖女様も手に掛ける大罪人になるの!」
狂って、狂って、狂って、笑って、哂って、哂って、涙を流す。
大悪党の汚名だって全部、全部、被る覚悟があるんだもの。
誰よりも私であった貴女が一番憎い!
欲しい、欲しい、って望むなら努力すれば良いのよ。
他力本願で手に入れた力で何を得るというの!?
私は貴女のそれが一番許せなかった。
「いや、いや、死にたくない!助けてーーーーー」
悲鳴を上げる聖女様の胸を私はキラキラと光る星の剣(エクスカリバー)で貫いた。
夥しい返り血が私を真っ赤に染め上げる。
深い業の証だと見せ付けるように!
私は貴女、貴女は私。
私は私を殺したの。
さようなら、私。
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bkm