禁忌の柱

-SIDE アルス-



マリアが頑張っている今、俺が出来る事は殻外大地を降下させる事だ。

アクゼリュスが崩落しアルバート式封咒は解除された。

ダアト式封咒はイオンが解除している。

ユリア式封咒はティアが解いてくれる。

今頃、ラジエイトゲートでは鮮血のアッシュが待機しているだろう。

「アルス、準備は良いかしら?」

ダアト亡命を境に態度が軟化したティアに俺は

「準備は出来てる。」

超振動をユックリと発動させた。

それと同時にティアがユリア式封咒を解く。

ティアの指示通りにパッセージリングを繋ぎ合わせ、ラジエイトゲートで操作しているアッシュと共に殻外大地を降下させる事に成功した。

これで一つ目的が達成された。

マリアは、キムラスカを制するだろう。

似非聖女と神(ローレライ)を打ち倒す事が出来るのはマリアだけ…

倒した後に本当の戦いが始まるのを理解しているのは俺だけなのだろうか?

マリアは生に執着してない。

きっと用意された死を簡単に受け入れる筈だ。

俺はマリアを失うつもりは毛頭無い。

この身が呪われているのだというのならば、神にだって反逆しよう。

ギュッと握り締めた拳から朱(あか)い血が零れ落ちる。

しかし大地に落ちる前に音素へ還る様は、まるで俺達の未来を暗示しているかのようだった。


禁忌の柱を消滅(なく)し、世界は変革の時を迎える。





-SIDE アッシュ-



アルスがアブソーブゲートを操作する事に俺は少しの不安が残る。

この世界に生み出されてまだ七年だ。

通常であれば庇護されるべき立場だろう。

それにアルスは刷り込みをされてない。

「アッシュ、アルスが心配か?」

ユッグの言葉に

「いや、アルスの事は心配してない。が、アイツがきちんと超振動をコントロール出来るか不安だ。」

本音を洩らした。

ぶっちゃけ、超振動の訓練をやり始めたばかりのペーペーなのだ。

失敗すれば強制的に世界崩落という滅亡ルートに突入するのだからプレッシャーは相当なもの。

「大丈夫だ。アルスを信じてやれ。アノ子はアッシュが思ってるよりも強い。」

ユッグは俺の頭をクシャリと撫で大らかに笑った。

この世界に生み出されて一年も経たないユッグは、17年も生きている俺よりも大人だ。

父のような兄のようなユッグの仕草は刷り込みがあったとしても本物なのだろう。

「俺も負けてらんねぇーな。」

俺の言葉にユッグは柔らかな笑みを浮かべ頷いた。

「そろそろ向こうもパッセージリングの操作を始めている頃だろう。」

ユリア式封咒を解いていくユッグに合わせて俺も超振動を発動させる。

パッセージリングを繋ぎ合わせ、アルスがいるアブソーブゲートを繋いだ瞬間に世界の殻外大地がユックリと降下した。

どうやら向こうも巧く行ったようだ。

後はマリアがキムラスカを征することを待つだけになる。

俺はこれが最期の決着だと思っていた。

しかし、本当の戦いの幕は今上がった事を俺達は知らない。



古の魔女が残した禁忌の柱。

それは星の子達によって取り除かれた。

しかし隠された戦いの幕がいま上がる。



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