ペルソナ
-SIDE エーメ-



「導師になったつもりですか、モース。」

散々見下してきた人形(レプリカ)に追い詰められる気分は如何ですか?

ラルゴとリグレットに取り押さえられているモースは

「人形の分際で、私にこんな事をしても良いと思っておるのか!?」

大根役者並みの台詞を吐いた。

「ふふ、愚問ですね。僕がダアトのトップなのだから良いんですよ。導師侮辱だけではなく、貴方には沢山の罪科がありますしきちんと償って頂きましょうか…ねぇ?」

ユッグより差し出された書類に目を通しモースにニッコリと微笑んでやる。

「おやおやキムラスカに秘予言を洩らしただけではなく、横領に詐欺行為、スパイ容疑に脅迫、恐喝とは大悪党ですね。僕の被験者を毒殺していたのは君とは、被験者も報われませんね。」

君の共犯者の一人は音素帯にいますけど。

「な、何故それを!?」

驚き慌てふためく様は滑稽だ。

「穴だらけ過ぎるお粗末な計画に突っ込み所満載で、今更過ぎるんですけど?」

本当にお粗末過ぎるヴァンとモースの計画にダアトの未来は暗いと思いましたからね。

無能でアッパッパーな団員を一掃させて貰いましたとも。

「火刑、水刑、銃殺、絞首刑、どれが良いですか?」

一番苦しいのが良いですよね。

と言外に笑顔で告げれば

「こ、こんな事をして許されると思っているのか!?これはユリアに対する冒涜だっ!!」

頓珍漢な言葉を吐く樽豚。

ユッグ達の呆れた視線に気付いてないのだろう。

「ユリアねぇ…消滅予言を態と隠した性悪魔女を崇めている貴方の神経大丈夫ですか?」

冒涜と取るなら勝手にどうぞ。

消滅予言と知らなかったのか五月蝿くなったモースを一瞥し

「まぁ、知らなかったからと謂ってペラペラとキムラスカに洩らすのは戴けませんし、マルクトに対しても貴方の首を送る事で戦争を回避する事に合意して貰えましたし潔く死んで下さい。」

死刑宣告を告げた。

取り合えず手っ取り早く斬首刑って事で、ユッグに伝えれば彼は剣を抜き一瞬にしてモースの頭と胴を斬り離した。




慈悲と慈愛に満ちた導師イオンなんて存在しませんよ。

鍍金で出来た仮面(ペルソナ)で作り上げた導師なんですから!

欲しいのはマリア一人だけ。




-SIDE シンク-



野ざらしに曝されている死体に僕は溜息を吐いた。

散々道具だと馬鹿にした僕等に殺された奴は最期に何を思ったのだろう?

愚かな被験者代表とも謂える奴の思考に少しだけ興味があった。

予言と魔女(ユリア)を愛した男は、神(ローレライ)と魔女(ユリア)から救いの一つでも得られたのだろうか?

「シンク、まだそんな所にいたんですか?」

イオンの声に振り向けば底意地の悪い笑みを浮かべていた。

「イオン、表情(かお)が歪んでるよ。」

そんな表情(かお)を信者が見たら嘆くよ。

僕の指摘にイオンはシラっとした表情(かお)で

「シンクは根性が歪んでますもんね。」

猛毒を吐いた。

本当に失礼だな!

「で、あの樽豚に思い入れなんてあったんですか?趣味最悪ですね。」

「勝手に自己完結しないでくれる?あんな樽豚に思い入れなんてあるわけないだろ。恨み言ならあるけどさ。」

傍から聞けば双方、酷い言い様である。

しかしこの場にいるのはシンクとイオン、守護役であるアリエッタとそのお友達ぐらいだ。

結果だけ言えば止める人間がいない。

まぁ、仮に居たとしても現実逃避するのではないだろうか?

「キムラスカと決着を付けて、殻外大地降下とローレライ討伐を成した後どうするつもりさ?」

キムラスカの象徴であるバチカルは地図上から消される事だろう。

殻外大地降下とローレライ討伐はマリアを中心として行われるだろう。

超振動で大地降下させたとしても瘴気はどうにもならない。

マリアに圧し掛かる負担は増すばかりだ。

「瘴気中和は眼鏡(お父さん)と死神(お母さん)にでもして貰えば良いでしょう。」

輝かしい笑顔で言い切るイオンに顔が引き攣る。

「…二人とも男だけどね。瘴気中和に当てがあるなら別に文句ないさ。」

「問題は全部が終わってからですね。」

飄々とした表情は何処にも無く、仄暗い感情を隠す事をしないイオンに僕は溜息を吐いた。

「順番的にケムダー、次にマルクト、最期にダアトでしょうか?まぁ、ケムダーはアニスが後継者なわけですしマリアも戻るつもりは無いでしょう。とすればマルクトですね……潰しましょうか?」

派手に、とニコニコとマルクト消滅を掲げるイオンに

「ローレライと一緒に滅ぶのは御免なんだけど…」

太っい釘を刺して置く。

「でも、ブウサギ皇帝はマリアを手に入れようと躍起になるだろうね。」

マリアが原因で戦争が起こったとすれば、マリアは無言でオールドラントを去るだろう。

死を以ってして…

その辺をイオンもマルクトの皇帝も思い至ってない事に溜息が漏れそうだ。

マリアは自分の命を大切にしていない。

目的が達成されれば命の灯が消えても満足なのだろう。

「マリアは誰も選ばない。選ぶなら死だけだよ。」

僕の言葉に思い当たる節があったのだろう。

黙り込むイオンに

「イオン、マリアに選ばさないようにすれば良いんだよ。」

提案を投げかけた。

「出来るのですか?」

凝らん気な瞳に僕は苦笑した。

「するんだよ。被験者イオンに連れて行かれるのは癪だ。」

策を弄するのは僕の役目だしね。

「それもそうですね。頑張って下さいね、参謀長。」

失敗したら音素帯に還しますよ、と笑顔で脅すイオン。

僕は声を上げて笑った。

勝たなくて良い。

負けなければ彼女は自ずと手に入るのだ。



誰かのモノにならないなら皆のモノにしてしまえば良い。

本質なんて不要だよ。

僕等は仮面(ペルソナ)の上で生きているのだから!



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