ユリアとは

ダアトに戻った時、私達の仇であるレプリカルークがいたわ。

いえ、正確には公爵夫人と二人のレプリカルーク。

衝動的に殺しそうになったのは致し方ないと思って欲しい。

でもね、気付かされた。

愚兄によって生み出されたレプリカルークと未来からローレライに逆行させられたレプリカルーク。

逆行したルナは、中身も外見も七歳児だった。

マリア様と契約を交わした高位の存在によって肉体を得たそうなのだけれども…

もう一人のルークは17歳の姿を保っていたのは、大爆発の回避の一つだろうとディストが言ってたわね。

私は、いえ…私達は大きな間違いをしているのだと気付かされたわ。

特にルナが育った世界は劣悪としか言い表せなかったのだもの。

公爵襲撃し、誘拐し、不敬三昧の第一級犯罪者の私。

和平を盾に脅迫して無知を嘲る和平の使者。

スパイを平然と行う導師守護役。

不敬と罪を見ぬ振りをする導師。

タルタロス襲撃及び王族殺害未遂、キムラスカ軍港壊滅させた主犯等々の罪状を重ねる特務師団長。

護衛をしない護衛兼使用人。

堂々と国家反逆罪を犯し、親善大使を脅迫した偽姫。

そして世界を混沌に陥れた愚兄と六神将。

ポツポツと語り出されたルナの実体験に私を含めその場に居た一同は“有り得ない!!”と思ったわ。

罪人に誘拐され、捕縛され、脅迫され、見下され、予言の一言で死地に向かわされ、父を重ねて慕ってきた愚兄には見捨てられ、自称仲間に見捨てられ、自分を押し殺し世界の為に奔走し、最期には瘴気を消す為に一万の赤子(アメン)と共に死ねと命じられ、死に損なったからと愚兄の討伐即戦力として加えられ、ローレライ解放して死んだ子供。

自分が全て悪いんだと語る子供に別の世界の私達は、彼を洗脳していたのよ。

そんな無垢な子供を誰が悪いと言えるの?

悪いのは、平行世界の私であり、愚兄であり、周囲を取り巻く人達!

しかも裁かれずに英雄とは滅亡しても当然だわ。

この子供は加害者であり、最大の被害者でもあるのだ。

「ルナ、私は正直…誰かを許すという権利はないの。魔女(ユリア)の一族である限り、私は罪を償い続ける。でもね、ルナ、貴方がこの世界でのアクゼリュスの崩落させた事は、罪ではないのよ。崩落はダアトとキムラスカ、マルクトの意思だった。ルナ、貴方が罪だというならばダアトもマルクトもキムラスカも罪を背負う。以前の世界の私達が貴方に教えた事こそが非常識であって、これから学べば良いの。どうしても負い目に感じるのなら誰よりも幸せになろうとしなさい。」

泣きそうな顔をするルナに私は罪は国にあるのだと諭した。

「ティアに罪はないよ!でも、俺は…アクゼリュスを滅ぼしたから…」

何処までも自分を卑下する子供が憐れに思える。

間違った知識を正しいものだと教え込まされて、信じている姿は生み出されて七歳の子供なのだ、と私はルナを見て実感した。

もし私がマリア様に出会わなかったら、私はきっと平行世界の私と同じ無知で傲慢で恥知らずな人間になっていたのでしょうね。

私を導き、兄の恐ろしい企みを止め、魔女(ユリア)がどれ程までにも愚かで恐ろしい存在だったのかを知った。

滅びを知る術をホドの崩落で誰の手にも渡らぬようにした女が聖女であるものか!

「なら私は滅びと知って予言を隠した穢れた聖女ユリアの忌まわしき子孫なのよ、ルナ。ユリアは星の滅亡を望んでいたのかもしれないわね。欲しかったのは人々からの賞賛と栄光と名誉。平行世界の私のような傲慢女なのよ。」

ユリアの血など私の代で絶えさせる。

これはユッグとも決めた事だもの。

哀し気に微笑む幼子に私は

「どうしても償いたいのなら、私と一緒に償っていく?」

手を差し伸べた。

これは偽善。

一人では償いきれない罪で、重くて苦しいから巻き添えにしてしまう傲慢。

たどたどしく手を取るルナに私は卑怯で臆病な自分を嫌悪した。



ユリアとは、愚かで傲慢で虚栄心の強い女だった…

それだけの事よ。

貴女は聖女なんかじゃない。

星の滅びを隠した魔女なのよ!


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