「秘予言を調べて欲しいんです。」
情報屋を営んでお得意様となっている銀の青年の言葉に私は溜息を吐いた。
「それは…随分と大きな案件ね。」
秘予言を知る事が出来るのはダアトの導師イオンだけに限られる。
表向きは…
その実、上層部であれば第六譜石に記された秘予言を知る事が出来るらしい。
但し、第七譜石は発見されてない為、その先の未来の出来事は導師しか知りえないのだけれども。
「ダアトに不振な動きがあるみたいで…」
心底困った顔をする青年に私は
「導師イオンに取り入るのは難しいけれど、上層部に取り入って第六譜石に記された秘予言なら何とかなるかもしれないわ。」
一つ提案を出した。
銀の青年は
「それで構いません。」
私の提案に乗ってくれた。
「先ずはマルクトの戸籍とダアトに渡る身分証、教団への推薦状が必要ね。」
裏家業の私には戸籍自体が無いもの。
作ろうと思えば作れるけどお金が掛かるでしょう?
だったらこの依頼を期に作ってしまった方が得策じゃないかしら?
私の無茶とも言える注文に彼は
「マリアさんの戸籍と身分証、推薦状は私が用意しておきます。」
爽やかな笑顔一つで快諾した。
「そう…じゃあ、用意が出来次第仕事に掛かるわね。」
温くなった紅茶を飲み干す。
コネを巧く利用すれば半年ぐらいで聞き出せるだろう。
その裏を取るのに更に半年は掛かる。
目安として一年ぐらいかしら?
「マリアさん?」
今後の事を思案していた所を銀の青年の呼び掛けで我に返った。
彼は私を大事に扱ってくれる。
情報屋としての腕を買ってくれる。
見た目に惑わされない人だ。
「大丈夫よ、それよりアスランさん今日は泊まって行くの?」
夜を進めれば彼は
「マリアさんが良ければ…」
頬を染めて泊まる旨を告げた。
ふふ、いつまで経っても初々しい。
きっとモテるでしょうに…
私の生活を思いやって付き合ってくれる優しい青年に私は一時の愛を捧げる。