愛を請う女
マルクト、ダアト、ケムダーより宣戦布告される少し前の哀しい女の最期。


キムラスカの王女として生きてきた。

でもそれは偽りで、本当の父は六神将の一人だと謂う。

わたくしが父と慕った人は、わたくしの死を誰よりも望んだ。

わたくしよりもキムラスカに入り浸る大詠師の、ポッと出の胡散臭い女の言葉を信じ選んでしまった王様。

今になって気付くのです。

誘拐される前のルークも、戻って来たルークも、親善大使として旅をしたルークも違う人物なのだと。

あの時、タルタロスでルークがわたくし達の知らないルーク・フォン・ファブレだと名乗った事に気付かなければならなかった事を…

打ち鳴らされる罪人であるわたくしを処刑する鐘の音にわたくしは引き摺られるように処刑台に立った。

「偽姫メリルよ、キムラスカを欺いた罪は重い。心して罰を受けよ。」

朗々と罪状と罰を告げる父だと思っていた人を見やる。

そしてわたくしが座っていた王女が座る席には着飾ったキムラスカの聖女と謳われているヒメコがいた。

蔑み、侮蔑、嘲笑する眼にキムラスカは魔物によって滅ぶのだと確信する。

「最期に言い残す言葉はあるか?」

彼にとって最大級の慈悲の言葉なのでしょう。

「わたくしの悲しみは、血の繋がりは無くともお父様の子ではなかったと云う事です。」

ルークに対する愛は、己が王族である為に留めておきたかった程度の存在だったのでしょう。

だから彼に見限られても仕方ありませんわ。

「わたくしの死で開戦をされるのであれば、お止め下さいまし。民の心も正義もキムラスカに在りません。国庫に残る財は如何程なのです?マルクト人を殺して手に入れた領地で従順にマルクト人がキムラスカの為に働くと思うのですか?」

わたくしの訴えも

「我が身可愛さに情に訴えるつもりなのね。とても醜悪だわ。」

聖女と呼ばれている女が早く死ねと言わぬばかりに切り捨てた。

そして彼女を咎める者は誰一人としていない。

最期の慈悲が毒殺とは、苦しんで死ねと云う事なのですわね。

赤いワインの色に私はルークを失ったキムラスカの未来を視ました。

わたくしも貴女も醜悪ですわ。

焼けるような痛みが喉を通る。

掻き毟りたくなるような痛みに耐え、私は

「      」

今は何処にいるのかも解らない彼の名前を呼んだ。

朱色の旗はキムラスカの証。

それを掲げるという事は、開戦の合図。

わたくしは、何も出来ないお飾りの王女だったのですのね。






人だからこそ愛を請う。

哀しい、悲しい、かなしい、偽姫と罵られて死んだ女。

彼女が国民をキムラスカを愛し、想ったのは変えられない事実。

例え愚かな王女だったとしても、彼女の死でキムラスカの良心は無くなった。

一番欲しい愛を手に入れる事の出来なかった、愛を請う女。

今、彼女は何を思う?


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追記:

ナタリア達はレプリカの事を知りません。

お頭の可哀想な似非聖女様もロレ様もアッシュが自分でバラすんじゃね?

と思って教えてません。

ただ、多重人格なのかも?

と思っているぐらいです。

アッシュは一切彼等の前に出て来ませんでしたしね。

んで、ナタリアは姫としてではなく、庶民の子として処刑されした。




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