-SIDE イオン-
ルークの超振動によってアクゼリュスは降下した。
現地に残されたのは、罪を償うべくして集められた罪人達。
その事を知っているのは、アスラン・フリングスとジェイド・カーティスと僕の三人ぐらいだろう。
ユリアシティにてアッシュ達と合流する手筈は変わりないが、唯一変更点があるとするなら捕らえていた罪人達がいなくなった事ぐらいだろう。
「つくづくキムラスカの聖女は短慮な方でしたね、ティア。」
忌々しいと呟けば後ろに控えていたティアが
「はい、イオン様。聖女様もですが、キムラスカ王女は聡明で慈悲深いとお伺いしてましたが、噂とは当てになりません。あぁも短絡的な方だったなんて…」
ウンザリと同意を示した。
言葉を切ったのは此処にマルクト将校がいるからでしょうね。
この後に続く言葉といえば、滅べキムラスカでしょうか?
それとも滅べローレライだろうか?
ティアは割りとお喋りだ。
きっと彼女は心中で彼等に罵詈雑言罵り撒くっているのは間違いない。
「それにしてもルークレプリカの様子がおかしかったですね。」
ジェイドの言葉に僕も同意を示す。
「あれは第三者の眼だった。」
ポツリと呟いたアッシュの言葉に
「パッセージリングを破壊した時の怯えは偽りじゃないと思うしね。雰囲気がまるで違う。」
陰ながら監視してきたシンクも困惑気に溜息を吐いた。
「何だか二重人格の患者みたいですね。崩落以前の彼は何かを知っているようでしたが、崩落後の彼は何も知らないようでしたし…」
フリングス少将の言葉は的を得ているなと納得する。
「面倒ですがルークレプリカは生け捕りにしないとなりませんね。彼が僕達の知らない何かを知っている可能性は大きいですし、捕まえてローレライや似非聖女に関する情報を吐いてくれればもっと嬉しいのですけれども。」
サクっと音素に返しても良いのだが、彼しか知らない何かがローレライと繋がっているのなら僕達は知っておかなくてはならない。
「このことはマリアには内密にした方が良いと思うんだけど?」
シンクの提案に
「それもそうだな。俺もマリアには話さない方が良いと思う。」
アッシュも同意した。
「マリアさん、大丈夫でしょうか?」
ソワソワと心配を滲ませるフリングス少将に苛立ちつつも
「アリエッタが傍にいるので大丈夫でしょう。」
心配無用だと伝えておく。
医術にも秀でているアリエッタを控えさせておけば順応な対応を取る事が出来る筈。
それにしてもキムラスカの聖女もルークレプリカもマリアの負担になる事ばかりしでかしてくれる。
八つ裂きにしてもし足りないぐらいだ。
「この度のキムラスカの無礼にダアトからキムラスカに導師イオンの名に置いて宣戦布告せねばなりませんね。フリングス少将、図々しいお願いだとは存じますが、ダアトと至急連絡を取りたいので無線機を貸して頂けませんか?」
彼も僕の言葉の意を汲んで
「えぇ、構いませんよ。そういえばイオン様、我がマルクト帝はルーク様の超振動によって鉱山であるアクゼリュスを失いました。キムラスカは余程戦争を起したいのですね。先程、キムラスカにダアトは宣戦布告なさると、マルクトと共同戦線しませんか?」
巧く誘ってくる。
「マルクトに助力願えるならばこれ以上の事はありませんが、勝手に決めても良いのですか?」
知らぬ存ぜぬを一応通しておく。
ダアトとマルクト間では、キムラスカがルークレプリカを使ってアクゼリュスを崩落させ戦争を起す事は知っているけれども体面がある。
「ピオニー陛下から“万が一、不測の事態が起きればお前の采配で最善を尽くせ”と有り難いお言葉を頂いておりますし、鉱山発掘地である“アクゼリュス”を“キムラスカの意思”で崩落させられたのです。陛下も崩落をしらされた時に私の生存は“絶望に等しいもの”と思い“調査後”然るべき“事実”を確認した上で、キムラスカと対峙されるのは明白な事。我等もグランコクマに報告をしなければなりませんので、その時に“アクゼリュス崩落の真実”をイオン様からピオニー陛下に告げて戴ければマルクトから“確約”が頂ける事でしょう。」
言葉を選んでいる辺り、目の前の青年将校は頭が切れる。
「なら決まりですね。ピオニー陛下に僕から“真実”を伝え助力を再度お願いしましょう。案内して頂けますか?」
決まり文句を紡ぎながら僕等は通信機があるメインドックへ向かった。
高らかに突き付けられる開戦の意(言葉)
愚かな人々は立ち上がる。
正義(ユリア)の名と神(ローレライ)の名の元に
導師(子供)は嗤った。
彼等の終焉(命)を握った事に
生殺与奪権は導師(子供)達の手の中にある。
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追記
マリアさんは超振動の時に咄嗟にマクスウェルの力を行使したのでダウン中。
超振動からタルタロスを守らなければ自分ごと木っ端微塵に死亡フラグが立つから回避しただけ。
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bkm