その場所に居たのは俺かもしれない-if-

-SIDE 逆行ルーク-


俺達は以前とは違って砂漠を越えてアクゼリュスへ行かなかった。

信託の盾の妨害も無かったし、船旅だけあって早く救助出来る。

前回とは全然違うけれども良い方向に世界は動いていた。

俺は、自分だけで未来を書き換えるなんて傲慢な事を考えていたんだな…と思う。

今は俺の心の奥底に眠っているだろうルークにいつかこの身体を返したいと思っているんだ。

でもアクゼリュス崩落後にどんな事が起こるのか想定外だからもう少しこのままでいて欲しい。

無いとは思うけれども、以前の俺のような目に遭って欲しくないんだ。

ナタリアが城を抜け出して密航してきたのには頭が痛いけど…。

ケセドニアを通過し、カイツール軍港へ向かった。

マルクト軍のフリングス将軍とケムダーの衣装を身に纏ったアニスと一人の女性が俺達を向かい入れる。

「お久しぶりです。ルーク・フォン・ファブレ様。この度はキムラスカ側の公道開放にアクゼリュスの民の救援援助を陛下に代わり厚くお礼申し上げます。」

フリングス少将が略式ではあるが礼を俺に取るのにはビックリした。

俺は慌てて礼は不要だと告げる。

フリングス少将の隣にいたケムダーの衣装を纏いベールで顔が見えない女性は綺麗な動作で一礼し、後ろで控えていたアニスもそれにならって礼をした。

アニスが身に着けている服が導師守護役の制服ではなく、ケムダーの上級ギルドが身に着ける衣装だった事に動揺を隠せない。

「久しぶり、アニス。イオンはどうしたんだ?」
戸惑いながらもアニスに聞けば

「導師イオンは明日合流予定となっております。」

事務的な言葉に俺の心は哀しく揺れた。

「まぁ!導師様もアクゼリュスへ向かわれるのですね。」

感心しましたわ、と頓珍漢な感想を述べるナタリアを見る眼が厳しいのは俺の見間違いじゃないと思う。

瘴気塗れのアクゼリュスに行くのがどんなに危険な行為なのか彼女は理解しているのだろうか?

ナタリアを見る眼が厳しい事に彼女は気付いていない。

「失礼ですが、親善大使一行にナタリア姫の名は無かったかと…」

困惑するアスランさんに俺は申し訳なく思った。

どう説明しようかと思案しているとナタリアが

「まぁ!仇敵であるマルクトとの和平を結ぶ場にわたくしがいなくてどうするのです!それにルークは外交が始めてですのよ。尚の事わたくしが支えてあげねばなりませんわ。」

キムラスカの恥を曝してくれた。

ポカンとしたアスランさんやアニスの有り得ないっていう表情(かお)はナタリアは完全にスルーしているんだろうな。

「恐れながらナタリア姫、キムラスカにお戻り下さい。ルーク様、キムラスカ領事館にナタリア姫を帰還させる兵を用意して頂けますか?」

アスランさんの全うな軍人としての対応に感心しつつ

「分かりました。と、いうことでナタリアはバチカルに帰れ。」

帰還を命じれば、憤慨した様子で俺を睨み付け

「なっ!わたくしはルークを想っての事ですのよ!どうして同行してなりませんの?」

怒鳴りつける様は王女の威厳もない。

俺はまた繰り返すのかなと半分溜息を吐きながら

「陛下にもナタリアはアクゼリュスへ行くなって命令されてただろ。ナタリアに何かあったら責任はマルクトに行くんだぞ。」

噛み砕いて説明するも納得する筈も無く

「なら、私の事はキムラスカの姫と扱わなくて結構ですわ。わたくしの事はナタリアという一人の治癒師として扱って下さいまし。」

マルクト名代のジェイドやマルクトの高官であるフリングス少将にキムラスカ、マルクトの書記官がナタリアの失言の言質を取ってしまった。

何もかもが違ってくる未来に俺は怯えるしかなかった。

世界は救えるのだろうか?




-SIDE アッシュ-


俺は変装してイオン達よりも先にカイツール軍港に先入りしている。

一重にレプリカルークとキムラスカの聖女様を拝む為だ。

ぶっちゃけ、このまま斬り捨てたいという気持ちはあるけれど、それをしたらマリアに迷惑が掛かるので諦めた。

にしてもアニスがケムダーに移った事で仕事の皺寄せが来た事には辟易している。

使えない幹部ばっかりだったんだな、ローレライ教団。

待つ事半刻ぐらいで、奴等は到着した。

何故、此処にナタリアお前がいるんだ!!

声に出して突っ込まなかった自分を褒めてやりたい。

そして何故護衛していない使用人!

しかも馴れ馴れしく呼び捨てにしてんじゃねぇーよ!

一歩後ろに控えて主人がOK出すまで控えているのが使用人だろう。

このモドキがっ!

何だか一気に過去の淡い初恋の思い出や幼馴染で親友だと想っていた輝かしい思い出が脆くも崩れ去った気分になる。

しかし奴等は俺の気持ちを打ち砕き、尚且つ追い討ちの如く非常識な行動を仕出かしてくれた。

キムラスカ捨てて良かったと再確認した俺は、同時にレプリカルークに少しだけ同情した。

この後、イオン直々に精神攻撃をその身に一身に受ける事になるのだ。

下手したら肉体的攻撃も受けるかもしれない。

病弱?

滅茶苦茶縁遠い奴だからな。





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