踊り子
肌を魅せるスケルトンの際どい衣装にも慣れた。

芸は身を助くと先人が残した言葉は偉大だと思う。

モデルをしていた時に色々とバレイやヴァイオリン、テコンドーなど様々な習い事をしていた経験で今を生きている私。

最初は慣れない身体で絶望したのも事実だけれども生きて行くには働かなくてはならなかった。

魔物を狩ってはガルドを稼ぎ。

酒場で歌を歌っては宿代を浮かせ、ガルドが底を尽きれば娼婦紛いの事をしてガルドを稼いだ。

この世界に来て数年、私はケセドニアを拠点に情報屋と踊り子で生計を立てている。

この世界はオールトランドと呼ばれ、キムラスカとマルクトの2つの国しかないという。

但し、自治区であるダアトと流通の拠点であるケセドニアは、半独立国家とも言えた。

平凡な顔立ちは、ある種この仕事に向いているのが幸いだと言える。

世界に慣れるまでは生き地獄だった。

ぬくぬくと私を奪っておいて食事や金に困らず手厚い保護を受けている元凶に復讐する事を糧に生きてきた。

「マリア?」

ベットを共にした男が訝しげに私に声を掛ける。

「フランツ、起こしてしまったのね。まだ時間はあるけど?」

セックスをするか?

と暗に問う。

フランツは私の腕を引きベットへ押し付けた。

「時間が許す限りマリアは俺の物だ。」

荒々しい口付けに快楽が押し寄せる。

静かな部屋に淫靡な音とあられもない喘ぎ声が部屋を満たした。




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フランツとの関係は私がこの世界に来て途方にくれた時から始まった。

言葉も通じない、文字も分からない、世界の常識も知らない不審な女を哀れんだのだろうか?

もうそれを問いただす事はないが、彼が自ら言葉、文字、世界の常識を教えてくれた。

フランツは私にとってこの世界での師であり、友である。

身体を重ねるようになったのは、彼が愛した女性と結ばれる事が出来なくなったからだ。

この世界は預言に縛られている。

預言一つで結婚が決まるなんて馬鹿馬鹿しいことこの上ない話。

それでもこの世界の住人にとっては、預言は絶対で生活の一部なのだ。

私は私を知る人がいない世界で寂しかった。

フランツは愛する人を預言によって奪われた。

私達の間に愛はない。

ただ惰性と情で成り立つ関係なのだ。

私がフランツに隠れて情報屋を営っていく内に彼がどんな人なのか知った。

フランツの名前が偽名で、身分は高位の人間だと何となくだが理解していたけれど、彼が
マルクト帝国を治めるピオニー・ウパラ・マルクト9世だと知った時は本気でどうしようかと思ったのよ。

私は今の生活を手放したくない一身で、フランツの正体を知りつつも私は皇帝陛下として扱わずフランツとして接した。



私はいつか貴方を利用して復讐を成し遂げるでしょう。

あぁ、私は何て醜いのだろう…




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