-SIDE ナタリア-
キムラスカの聖女と祭られるヒメコという女。
今まで私がルークの隣に居たのに突然居場所を奪った憎い女。
どうしてくれようかしら?
仇敵であるマルクトと和平が結ばれる親善大使にルークが選ばれた事に私は誇らしく思ったと同時に私も同行すべきだと思いましたわ。
ですが、お父様は同行を許可して下さいませんでした。
あの女は同行しているというのに!
何故ですの?
納得がいきませんわ!
「どうしてお父様は解って下さいませんの?」
嘆く私を慰めてくれたのは、一年程前に傍付きになったメイド。
彼女は気が利き、私の賛同してくれる理解者。
私のお気に入りの一人でもあった。
「ナタリア様、わたくしが宮殿の外までお連れ致しますわ。きっと陛下もナタリア様の民を想うお心を解って下さる筈ですもの。」
フワリと微笑み私の意思を汲み取ってくれる。
「ナタリア様が和平に尽力される事をわたくしは誇りに思いますわ。」
彼女の手にはメイド服と鬘があった。
「さぁ、お着替え下さいませ。宮殿を抜けたらわたくしが手配した宿で旅支度の品を受け取って下さいまし。」
私は彼女の心遣いに感謝し、メイド服に着替え、彼女の誘導で町の宿へ向かう事が出来た。
宿では、彼女が手配した旅支度に身を包み、ルーク達が乗る船に私はヒッソリと乗り込んだ。
此処まで手を尽くしてくれた彼女には感謝してもしきれない。
和平が終結し、この大役が終えたら私は彼女に褒章を与えようと思いますの。
ルーク、私は貴方の傍でサポート致しますわ。
でも先ずは、あの偽聖女を排除しなくてはなりませんわね。
ふふ、ケムダーの傭兵を雇って暗殺してしまいましょう。
ケセドニアで合流すると彼女が言ってましたもの。
大丈夫、私はキムラスカの女王。
私の愛を邪魔する者は消えてしまって当然なのです。
嫉妬に狂った女は、手引きしたメイドの嘲笑に気付かない。
所詮、魔女の掌で踊る傀儡人形。
-SIDE 名も無きメイド-
あはははは!
此処まで愚かな王女様とは思わなかったわ。
ふふ、流石予言妄信大国キムラスカね。
私?
私は気高きギルドの一員よ。
マリア様の命でナタリア王女のメイドとして王宮に入り込んだ者。
自分が優秀と信じて止まない馬鹿の相手は本当に疲れたわ。
苦言を呈する有能な者達は尽く手打ちにしたりする傲慢王女に仕えるなんて忍耐試されているのかと思ったけれどもね!
まぁ、それは済んだ事だもの。
早くケムダーに戻らないと…ね。
あの頭の足りてない王女様は気付いてないのでしょうね。
だって、王命に叛いた国家反逆罪としての罪人になるんですもの。
まぁ、王女に抜け出されたメイドや兵士達にも処罰が下るのだけれども私には関係の無い事よ。
あぁ、ついでに密航者という罪も問われるのかしら?
愚かなナタリア王女を乗せた船を私は見送り、踵を返した。
「そう、彼女はアクゼリュスへ向かったのね。」
マリア様の懐刀と名高いルーティ様の言葉に私は是と返した。
「自国の民を見捨て、他国の民の為に奔走するお姫様。国民はどう思うかしら?」
うっとりと呟かれた言葉に私は沈黙を守る。
「これでキムラスカも終焉を迎えるのね。」
ルーティ様は、嫣然と微笑みを浮かべ
「彼女の出自と出奔を国民にばら撒きなさい。キムラスカは内側からも崩壊して貰わないとマリア様の手を煩わせる事になるのだから。」
命令を下した。
私は謹んでその命を受け入れる。
ケムダーの情報部隊アフロディテの名に懸けて、キムラスカに混乱を齎しましょう。
数日後、キムラスカの王女であるナタリア姫の出自と出奔はキムラスカ全土に知らされる事となる。
鵺(嫉妬に狂った女)が破滅へ羽ばたいて逝った。
行く末は、怒れる国民の手の中に。
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bkm