ILLUSION CITY(幻影都市)

-SIDE アスラン-


オールドラントにはキムラスカ、マルクト、ダアトには知られていない都市がいくつもある。

と、謂ってもそれを統括する存在が現れる前までは単なる暴徒の根城だったと言っても過言ではない。

マリアさんが築き上げたケムダーを始めとした組織は瞬く間にこの世界に浸水していった。

レプリカ問題も彼等を光の民(アメン)と認める事で人々に蔓延る価値観を少しずつ変えていった。

マリアさんは未来を一歩も二歩も先を見据えている。

だからこそ、彼女は誰の手も取らない。

「…諦めきれる想いではないんですよね……」

あの時、マリアさんに告げた言葉は、まだ有効なんですよ。

「フリングス少将?」

訝しげに私を見る部下に苦笑しながら

「大丈夫ですよ。さて、捕らえた罪人に会いに行くとしましょうか。」

心配ないと告げた。



名も無き都市、ILLUSION CITY(幻影都市)と呼ばれた都市の一角に空に浮かぶ牢獄に世界を混沌に陥れようとした主犯が牢獄に繋がれている。

偉大なるサザンクロス博士が作り出した譜業都市とも言えた。

「お久しぶりですね、フリングス将軍。」

ニッコリと微笑みを浮かべて出迎えてくれたのは、ケムダーの正装を纏ったマリアさん。

薄らと施された化粧は、マリアさんをより美しく魅せた。

ただ、以前のようにアスランと呼んで貰えなかった事が寂しい。

「お久しぶりです、マリアさん。そちらの方は?」

マリアさんの少し後ろに控えた少女は

「初めまして、フリングス将軍。私はアニス・グレイスと申します。」

ケムダー流の略礼をして微笑んだ。

グレイスの姓を名乗っているということは

「マリアさん、彼女が?」

マリアさんは、私の考えを肯定するようにフンワリと微笑み

「アニスはケムダーの次期当主になる者です。」

幼い少女の手を引いた。

「この度は罪人を捕まえて下さり感謝しています。此処からは私達の仕事…後程挨拶に伺いますね。」

一緒にいる事も叶わず、私はマリアさんを見送った。


-SIDE マリア-



アスランさんがヴァン討伐に借り出されているのは知っていたんだけど他の人だったら良かったのに…。

そう思っても仕方のない事だ。

彼は何かと私を甘やかそうとする。

その優しさを受け取れる女性(ひと)は決して私ではない。

もっと綺麗で美しく、心優しい女性(ひと)が似合うのだ。

彼の優しさに復讐を忘れてしまっては、本末転倒になる。

未だ心配そうに私を見送るアスランさんの視線から逃れるように冷たい通路を進んだ。

オールドラントで一番堅牢だと思われる牢に彼は鎖で繋がれている。

「惨めだね、ヴァン・グランツ。」

痩せこけた彼はダアトにいた頃の面影はどこにも無かった。

ただ、ギラギラと憎しみを燈した眼だけは、あの頃と変わってはいない。

「貴様っ!!」

ガシャンっと鉄格子を引っ掴むヴァンに控えていたアニスが

「大罪人がマリア様に向かって何という口の利き方をするかと思えば!この痴れ者がっ!」

怒鳴りつけた。

アニスが私を庇う様に前に出て

「貴様に流れるユリアの血あっての温情だというのに、劣化した脳味噌では理解出来なかったんだね。」
歌を歌うように

「折角ダアトで飼い殺しにしてあげたのにイオン様とマリア様の温情を踏み躙ったんだもん。死ぬ覚悟ぐらいしてるよね?」

死刑宣告を告げる。

手にはディスト作の電撃鞭(ボルトフレイル)が握られていた。

ヴァンを責めるアニスの手は容赦はない。

薬と容赦ないアニスの責めにヴァンは殻外大地崩落、レプリカ摩り替え計画等を吐露した。

虫の息のヴァンに私はニッコリと笑みを湛え

「ふふ、ローレライの消滅、ね。面白い計画だけどヴァン、貴方は此処で退場して貰うわ。大譜歌ならティアがいるし、ユリアの血でしか解けない封印ならユリアシティの罪人を利用すれば良いもの。一滴でもユリアの血が流れているでしょうし?」

銀の短剣で心臓を突き刺す。

ベットリと汚れた服に眉を寄せるが

「アザリー、彼の血と遺伝子データを採取して頂戴ね。」

後ろでずっと控えていたアザリーに指示を出した。

私はアニスの手を引いて牢獄を後にする。



秘め事のように、ひっそりと存在するILLUSION CITY(幻影都市)

復讐鬼はクツクツと歪んだ笑みを浮かべ嘲笑する。

神(ローレライ)に反旗を翻す時を告げるのだ!


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追記:

アニスは拷問も平気なお譲ちゃんです。

良心?

マリアさんの前に立ちはだかる敵にそんなもの要らねぇー

ケムダーの次期当主なんだから拷問ぐらい出来なくちゃv

とも思っているので率先して汚れ役万歳とこなします。



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