二人の女が居た。生き様は真逆と言っていい。
片や虚栄心と自愛に満ちたオンナ。
片や努力の末に勝ち取り栄光を手に入れた女。
何の因果か、全く異なる世界で互いの姿が入れ替わった。
否、奪われたのだ。苦労して作り上げた体も、手入れの行き届いた髪も容姿もスタイルも。全てとある神によって奪われたのだ。
女は、生まれた世界を愛していた。
オンナは、生まれた世界を疎んでいた。
煌びやかなモデルの世界から、言葉も通じない異世界に飛ばされた対価は己の体とでもいうのか。
異世界に飛ぶことを望んだオンナは、それが元々自分のものだったかのように扱った。
奪われた女は、なんと理不尽な存在(かみ)だと嘆いた。
その現況が一人の女が齎した狂気と知り憾んだ。何故私が……と。
血の滲むような努力の末に手に入れたトップモデルの座も、人脈も全て無に帰してしまった。
今の女の姿は、手入れされてない髪と平凡な容姿。たるんだ体は、醜くかった。
言葉も通じない世界にたった一人捨てられるように置き去りにされた女は涙を流した。
町の外を歩けば魔物もいる。不平等が当たり前で、いつ命を落としてもおかしくない状況。常人なら気が狂うだろう環境に、女は必死に冷静さを保ち進んだ。
別人に替わった容姿、通じない言葉、読めない文字、見たこともないお金。
異世界に飛ばされて二年が過ぎた頃に女は、この状況に陥れた女の存在を目の辺りにする。
片やユリアの再来として手厚く持て成され持てはやされたオンナ。
片や捨て置かれるように森に捨て置かれた女。
それが復讐の始まりだった。
偽りで染まった聖女様に復讐を誓った魔女は、鬱蒼と微笑を浮かべて言った。
「絶対に許しはしない」と。