ピョートル(絶対権力)
ベットから起き上がれるようになって間も無く、タルタロスにダアトからの使者が来た。

何故か聖女様はタルタロスが襲撃されていると勘違いを起こしているのには呆れたのだけれども…

「アリス、大丈夫ですか?」

イオンの言葉に

『大事無い。』

大丈夫だと伝える。

アリエッタの第三師団と主席総長であるユッグが此処にいると云う事は、ダアトで問題が発生したのでしょうね。

「きっと和平の妨害だよ!許せないわ!」

何を勘違いしているのか、頓珍漢な台詞に室内にいた者達が珍獣を見る眼で聖女を見ていた。

「ジェイド、通信機を貸して頂けますか?」

見事に聖女様の発言をスルーするイオンにジェイドも聖女様の存在を無いモノとして

「構いませんよ。」

操縦室まで案内する。

私は表向きはイオンの護衛なので一緒に行くのは当然の事だし、アニスは導師守護役、ティアはダアト軍人なので一緒に行動してもおかしくはない。

が、何故聖女様とルークが私達に連いてくるのでしょうね?

ルークは困惑した様子で、聖女様はタルタロス襲撃だと一人で喚いている。

そんなにタルタロスがダアトに襲撃されて欲しいのかしら?

与えられた貴賓室にでも篭っていれば良いものをと思った私は悪くないと思うのよ。

ジェイドも同じ気持ちなのかポーカーフェイスが微妙に崩れているわ。

不要(いらな)いオマケを引き連れてタルタロスの中心部と言える操縦室に着いた。

ジェイドが指示を出し、通信を開く。

「イオン様、用意が出来ましたよ。」

イオンは通信機の前に立ち

「アリエッタ、聞こえますか?貴女と一緒に来ているのは誰ですか?」

アリエッタに問い掛けた。

高い機動力を保持する第三師団は、常にどこかの師団と組んで行動するのだ。

《イオン様、総長と一緒に来ました…です。》 

「ダアトで何かあったのですか?」

《ジェイルブレイク(ヴァン)が脱獄しました、です。》

隠語を聞いてイオンは顔を諌めた。

イオンはジェイドに向き直り

「ジェイド、申し訳有りませんがダアトにて問題が発生したようです。詳しい話を彼等から聞かねばなりません。乗船の許可を出して頂けますか?」

タルタロス乗船の許可を求めた。

ジェイドは許可を出し、アリエッタとユッグは乗船する。




***************



イオンに臣下の礼を取るユッグとアリエッタ。

「ヴァン、発言を許します。ダアトで何があったのです?」

イオンの言葉にユッグが

「はっ!ジェイルブレイクが何者かの手引きによって脱獄しました。今現在、死者17名、重軽傷者21名出ており教団の建物も被害が出ております。また、第二地区と第五地区の被害が大きい為、アッシュとシンクを鎮圧に向わせました。不在を任されていたにも関わらずこのような失態、どのような処罰でもお受けする覚悟で御座います。」

深く頭を垂れた。

「過ぎた事は仕方有りません。しかし、僕が今ダアトに戻るわけにはいかないのです。」

困りましたね、と口では言うが何か企んでいるイオンに私は小さく苦笑を漏らす。

こんな所は被験者に似ていると…

『ケムダーにいるカンタビレ殿を呼び戻したらどうだ?ケムダーからはセラフィム、ドミニオンズ、ディナメイス、エクスシアイを討伐に派遣させよう。』

私の提案にイオンがニッコリと笑い

「アリス、有難う御座います。ギルドまで動かして頂けるとは助かります。」

導師イオンとして礼を述べた。

「イオン様、我がマルクトも兵を出しましょう。」

ジェイドも兵を出すと申し出る。

そんな中でやはり空気の読めない人間がいるわけで、聖女様が

「ねぇーケムダーって何ぃ?」

無理矢理話しに割って入ってきた。

自治区とはいえ、二大国家から認められているダアトの最高権力者とマルクトの和平の使者、そして彼等二人に許されているケムダーの代表である私達の会話に口を挟む事自体が不敬罪なのだけれども彼女は解ってないのね。

アニスやティア達は勿論の事、マルクト兵からも怒りの色が見て取れた。

例えキムラスカで聖女様と持て囃されていようともダアトもマルクトも認めてはいないのよ。

庶民と同じ扱いであると云う事を理解して欲しいわ。

私達は顔を見合わせ聖女様をいないものとして扱った。

その態度に気に喰わなかったのか

こんなの話とは違うじゃない…私は聖女なのよ!どうして敬わないの!?

ボソリと呟かれた痛い台詞にイオン達が顔を諌める。

「聖女様とルーク様には貴賓室に戻って頂きましょうかねぇ。」

身近にいた兵に彼等を貴賓室に連れて行けと命じたジェイドの眼は笑ってなかったわ。

「さて、邪魔者がいなくなった所で話を進めましょうか。」

イオンに促され、ヴァン討伐はギルドのセラフィム、ドミニオンズ、ディナメイス、エクスシアイの部隊とマルクトの部隊が派遣される事になった。

カンタビレの第六師団に関してはダアトに帰還し、ダアトの復興をして貰うことで話が纏まる。


マリアは誰にも判らないようにクツリと嗤った。




彼女が築き上げたモノ…

それは世界を動かすピョートル(絶対権力)




prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -