ジェイルブレイク・アンシムロック(脱獄した男)

-SIDE アッシュ-



「クソっ!」

ダンっと苛立ちをぶつけるように壁を殴る。

「アッシュ、気持ちは解るけど事態の収拾を図らないといけないんじゃないの?」

シンクの言葉に怒りを無理矢理押さえつけた。

目の前にいるシンクも俺と同じ気持ちだろう。

「二人とも此処にいたのか。」

ユッグの姿に二人はホッと息を吐いた。

被験者である奴とは違いレプリカであるユッグは奴よりも優秀だ。

「死者17名、重軽傷者21名に建物の破壊とは私の被験者は何を考えているんだ?」

今の今まで対応に追われていたのだろうユッグの気持ちは痛い程解る。

「世界と無理心中を図ろうとする馬鹿の気持ちなんざ解らねーよ。」

というか解りたくねぇー

「第一師団が罪人の行方を追っている。シンクとアッシュは被害が大きい第二地区と第五地区に回ってくれ。」

「ユッグはどうするんだ?」

俺の問いにユッグは苦笑いをし

「導師イオンの所へ向う。マルクトとキムラスカには罪人の手配書を回しておいたが、やはり導師の指示を仰ぐ必要があるだろう。」

イオンの元へ行くと言う。

それに俺は眉を顰めた。

先日起きた有得ない事故のせいだ。

あの髭の妹とは思えない程に聡明なティアとレプリカルークの間に擬似超振動が起こりマルクトに飛ばされたのだ。

しかも似非聖女まで一緒にいるという。

マリアの加護でユッグがレプリカだとバレないとは思うが、心配なものは心配だ。

「似非聖女には気を付けろ。アイツのバックにはローレライがいる。」

契約者(エレメンタラー)であったマリアでさえも瀕死の重傷を負わされたのだ。

ローレライや似非聖女、レプリカルークがユッグに牙を向かないとは限らない。

「ユッグ、アンタの帰る場所は此処なんだからサッサとイオンの所に行って帰ってきなよ。」

シンクの言葉にユッグは嬉しそうに笑った。

「あぁ、行って来る。」

そう言って部屋を出ようとしたユッグに

「怪我一つでもしたらダアト式譜術の的にするからね。」

シンクがニヤーと笑う。

いつも思うがシンクの愛情表現?は歪んでいると思う。

ビクっと大きな巨体を揺らして怯えるユッグに俺は笑った。

マリアがいて、イオンやシンク、アニスやティア達が俺達の家族だ。

俺の家族に手を出す奴は、この忌まわしい力(超振動)で消してやるよ。





-SIDE ヴァン-


忌々しい。

喉を潰され、顔を焼かれ、罪人の証である焼印まで押された。

あの日、私はダアトの地下にある牢獄に繋がれた。

あの女狐めっ!

この屈辱は絶対に忘れない。

預言に支配された世界を救う私の邪魔をするだけでなく、あまつさえ私のレプリカを作製し挿げ替えるとは!

ユリアの子孫である私の理想を邪魔する者は赦さない。

幸いにも私の忠実な部下が私を牢から出してくれた。

ザンっ

飛び散る飛沫を浴びながら私は走り抜ける。

此処で捕まるわけにはいかない。

私には預言に腐敗された世界を救う義務があるのだから!

ケセドニアに向いベルケンドに行く必要がある。

あの魔女を始末するのは後だ。

セフィロトの扉を開ける為に導師とレプリカルークを攫う必要がある。

全て上手く行く。

私はユリアの優秀な子孫だ。




ジェイルブレイク・アンシムロック(脱獄した男)は知らない。

全ては魔女の掌で踊っている事を!


--------


追記:

被験者ヴァンは硫酸でマリアさんに顔を潰されてます。

そんでもって罪人の焼印を額と両手に押されているので逃げ回るにしても苦労するのでは?

あまりにも話の拷問描写が厳しいと判断したのでカットしました。




prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -