マルキ・ド・サド(恋の罪)

-SIDE ジェイド-



ピオニーがマリアに執着するのが解ったような気がした。

彼女は自分本位ではあるが、他人を無意識に思いやる優しい心の持ち主。

きっと告げれば否定するだろうが、誰かが犠牲になるよりは自分を犠牲にする人だ。

突発的に起きた事故とも謂っても過言ではない公爵子息の自殺未遂。

これがマルクトの地で、タルタロスで起きた事ではなかったら玉座に座る幼馴染とダアト組は諸手を挙げて喜ぶ事だろう。

彼の子息がマリアを孕ませ、聖女と組んで亡き者にしようとした事に彼が激怒したのは記憶に新しい。

幸いにも契約者(エレメンタラー)であった事が彼女を生かしたのだ。

瀕死の子息を助ける為に彼女は消える事のない傷と大量の血を代償として差し出し、今はベットの住人と化している。

血の気の失した青白い顔を一撫でした。

「何故、貴女だけが苦しみを背負わなくてはならないのです。」

ルークを助けたのは、マルクトの私の為だと云う事に私が気付かないとでも思っているのですか?

本当なら守られ、平穏な生活も望めただろう彼女の手は軍人と同じ手をしていた。

戦う者の手。

ピオニーの庇護を受けるよりも自らの足で立って歩き出し、マルクトに、ダアトに…オールドラントに希望の種を撒いた彼女。

マリアが例えキムラスカの聖女と呼ばれる少女に対し仄暗い想いで起こした行動だったとしても私は思うのだ。

「マリア、貴女がどんなに否定をしても私の光である事には変わりない。」

私に誰かを焦がれるような想いを持つなんて考えもしなかった。

彼女の生き様に魅了されたのは私。

<愛している> 

きっとこの言葉は彼女に告げる事はないだろう。

誰よりも重い運命を背負っている彼女は誰の手も取らない。

これは確信だ。

何故なら無意識の内にマリアは巻き込む事に恐れている。

「この腕の中に閉じ込められたら良いのですがね…」

眠る彼女の覆い被さり口付けを送った。





それは決して許されない想い…

底の見えない海に溺れるマルキ・ド・サド(恋の罪)



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