運命の日、ヴァン師匠が稽古を付けに来るのではなくティアが預言を詠みにファブレ邸に訪れた。
前の運命とは全然違う彼女の態度に驚いてしまったんだ。
モースの配下ではなくシンクの師団にいるとは思わなかった。
礼儀正しいし、超振動で飛ばされてからは謝罪もして貰ったし、何より一度も戦わせて貰えなかった。
嬉しいような、寂しいような、変な気持ちになる。
ローテル橋も落とされなかったし、エンゲーブでは早々にジェイドに保護された為にライガクイーンの所に行けなかった。
ミュウと関わりが持てなかった事が一番の後悔かもしれない。
ミュウの代わりに見知らぬ同行者が出来た。
彼は俺をヒメコを拒絶する。
その理由は俺には判らない。
怖いんだ。
俺の知らない未来を歩む事が…
変わっている運命と道筋が何処に繋がっているのか…
何故ならイオンもアニスもジェイドも以前とは違っていたからだ。
これが普通なのかもしれない。
でも寂しいんだ。
華美な貴賓室に俺は通され一人悩んだ。
もっと仲良くなりたいと願ってしまう。
“ルーク、どうしたのだ?”
ローレライの心配した声に
「余りにも前とは違うからビックリしたんだ。」
寂しさを隠して問いに答えた。
“以前が異常だったのだ。あの者達と仲良くしたいと願うならば、また新たに絆を育めば良いではないか?”
諭すような言葉はすんなりと俺の心に染み渡る。
「そうだな…また新しく関係を築いていけば良いんだよな。」
俺の地位で余所余所しくなっているのかもしれない。
でも身分の差の垣根を越えられる絆を作れば良いんだ。
「有難う、ローレライ。元気が出たよ。」
“礼など要らぬ。”
人間臭い第七音素集合体に俺は笑った。
「先ずはタルタロス襲撃を防ぐ事かな…」
以前ではジェイド以外は惨殺されたんだ。
あんな悲劇を繰り返したくない。
“世界は変わってきている。愛し子よ、我も力になろう。”
俺は気付いてなかった。
俺が決意する度にパキリ、パキリと何かが壊れていく事を…
***************
マリア、マリア、俺に気付いて…
俺が俺でなく、俺の知らない俺が俺を生きている。
俺の意思は其処になく、知らない俺がマリアを傷付けた。
俺の声は届かない。
お前は誰なんだ!!
マリアを返せ!
俺を返せ!
冷たく、灰色の箱庭(世界)を返せ!
唯一、自由になれた短い時間に俺は短剣で胸を貫いた。
俺の自由にならないのなら破棄(いらな)いんだ。
沈んだDark Illusion(闇の幻影)が動き出す。
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bkm