迎える終焉と星の始まりを紡ぐ唄

預言の年になった。

ND20018年に世界は終焉を迎える。

レプリカヴァンはオリジナル以上に有能で、リグレットとラルゴを抱き込んだ。

もう被験者の居場所は何処にも無い。

イオンがマルクトより打診のあったキムラスカとの和平に先日旅立ったばかりだ。

モース以外の詠師達の了承の元での行動ではあるけれども、あの眼鏡が和平の使者って大丈夫かしら?

エンゲーブにて落ち合う事になっているとはいえ、何か厄介ごとが起きそうな予感がする。

『お久しぶりです、クイーン。』

優美な体躯を持つライガ・クイーンに私は声を掛けた。

彼女は喉を震わせクスクスと優雅に笑う。

“ほんに久しいの。そなたの声が聞けぬのが残念でならぬ。”

『ふふ、次に逢う時には私自身の魂(声)で歌を歌いましょう。そうそうクイーン、御子のご誕生おめでとう御座います。』

述べた祝辞に彼女はペロリと私の頬を舐めて応えた。

『クイーン、一つお願いがあります。』

私の言葉に彼女は沈黙する。

“…何だ?”

『居住を移して頂きたい。無論、タダでとは申しません。あの小賢しいチーグル族の長の首と新しい住処、御子が狩りに出掛けられるまでの期間はローレライ教団より食料の提供をさせて頂きたく存じます。』

元々彼女が此処に居を構える事になったのは、仔チーグルの愚行。

この棲家を追われる事になったのはチーグル族の蛮行だ。

彼女の怒りが空気に乗って肌を刺す。

“チーグル族を赦せと?”

彼女の家族であるライガ達と棲家を失ったのだから彼等を滅したいぐらいなのだろう。

チーグルがローレライ教団の聖獣でなかったなら速攻見捨てた事でしょう。

クイーンがアリエッタの母で無かったなら交渉などしないだろうし…

『赦すも何もチーグルは魔物では無くなったのです。ローレライ教団の名の元に人に飼われる獣…それにクイーン、彼等は人に害を及ばした。それは貴女とチーグルの問題から人の問題へと発展させてしまったわ。残念な事に…人里近いこの棲家も何れは人に知れる事でしょう。そしたら討伐隊が組まれライガは滅せられるかもしれない。貴女と貴女の子とアリエッタの兄弟を守る為に英断を下して頂けませんか?』

最早選択肢は無いのだろうけれど…

私の言葉に彼女は一考し

“マリアの名に誓ってか?”

静かに問う。

『マリアの名において新しい棲家になる森と一定期間ではありますが餌と小賢しいチーグル族の長の首をクイーン、貴女に捧げましょう。』

ニッコリと笑う私に彼女は

“そなたが其処まで言うのであれば致し方ない。その条件を呑もう。”

ライガ達に引越しの準備を伝えた。

こうして彼女達を新しい森へ案内し、小賢しいチーグルの長を見せしめとばかりに惨殺しクイーンに献上する。

ふふ、クイーンも彼の遺体を見て少しは気が晴れたのか上機嫌に笑ってくれた。


「ご主人様、どこに行くんですのー?」

ピョッコピョッコと着いて来る水色の聖獣に私は溜息を吐く。

こんなオマケ要らなかったのに…

『私の友人に会いに行くのよ。』

「お友達ですのーミュウも仲良くなりたいですの!」

ニコニコと楽しそうに笑うミュウにあの子は可愛いモノが好きだったわよね…

と彼女を思い出した。

今は任務でキムラスカにいる筈だけれどもお土産として持って帰ったら喜ぶかしら?


魔女は紡ぐ。

迎える終焉と星の始まりを紡ぐ唄を…


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追記:

マリアさんの似非声はボカロのメイコかな?

だってまんまの声だとロレ様や似非聖女にバレるもんね!

タルローみたいな小型(拳の半分ぐらいの大きさ)譜業人形。

機能は通訳っぽいもの。

逆行ルー君、ロレ様、似非聖女たんにはメイコちんが今後対応。

因みにルー君がタタルに飛ばされる数日前の出来事です。




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