-SIDE ノエル-
♪♪〜
♪〜
ラララ〜
広場から聞こえるのは明るい歌声。
子供達は歌声に合わせてダンスをクルクルと踊っていた。
「アリスちゃん、楽しそうだねぇ。」
踊る子供達に囲まれ倖せそうに唄っている20才ぐらいの女性を見て街の者達は安堵の息を吐く。
「此処に来たばかりの時は、寂しそうだったからな。」
「容姿も気風も申し分ないからね。是非、うちの息子の嫁に来て欲しいもんだ。」
「いやいやワシのところの孫じゃ!」
ワイワイと賑う街の住人達。
「ダメですよ、アリスさんは兄さんのお嫁さんなんですから!」
ふふーん、と笑う彼女に
「ノエルまだ分からんぞ。お前の兄はヘタレじゃからのー」
「ヘタレだしねぇ。」
ヘタレと連呼する大人気ない大人。
「アリスさーん!」
一段落した話題の彼女に声を掛けた。
声を掛けられた女(ひと)は
「ノエルさん、どうしたんですか?」
柔らかな微笑みで彼女を迎える。
「アリスさんが見たいって言ってた音機械が出来たの!」
私の言葉にアリスさんは一瞬驚き、そして誰もが見惚れるような笑みを浮かべた。
「ノエルさん、本当に?見に行っても良いかしら?」
キラキラと輝く瞳に私は嬉しく思う。
「勿論よ!」
私はアリスさんの手を引っ張って作業場に駆け出した。
子供達からブーイングが出るけれど無視、無視!
だってアリスさんを独占出来るなんて殆ど稀なんだもん。
大好きな、大好きな理想のお姉さん。
兄さんと結婚しちゃえば良いのになー
アリスさんを狙う輩は多いんだもん。
アリスさんが興味を持ってくれた譜業でガッチリとハートを掴んでおくのよ!
-SIDE マリア-
シュリダンで生活を始めて半年が経過した。
彼等は私の事を良い様に誤解してくれている。
暗い過去のある哀れな女ってところかしら?
私は街に馴染むように子供達から懐柔していったわ。
子供は警戒心の強い生き物だもの…慎重に信頼を勝ち得ていったの。
子供から大人へ連鎖のように繋がっていく輪に私は嗤った。
今では歌のお姉さんって所かしら?
「アリスさん、どう凄いでしょう?」
誇らしそうに告げるノエルに私は
「本当に凄いわ。どれだけの想いと努力が詰まっているのかしら?」
彼女が一番望むだろう言葉を告げた。
彼女は嬉しそうに頬を染め
「それは勿論沢山よ?アリスさん、喜んでくれる?」
期待の眼で私を見る。
私は彼女の望む言葉を囁いた。
私はアナタ達を大事に想っているわけではないの。
アナタ達の技術が大事なの。
だから私は薇仕掛けのカナリアのように望む言葉(愛)を囁くのよ。
そう、私は愛を唄(ささや)くカナリア(駒鳥)
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bkm