私の死が公表された。
ローレライと聖女様、レプリカルークに殺されかけたのだから命があった事が幸いと思うべきなのだけれども、今後に起こす行動を思えば少々やり辛くなったな、と思う。
「マリア、具合でも悪いの?」
護衛と称して傍にいてくれるシンクに
「いえ、大丈夫よ。」
平気だと伝えるが彼は一気に不機嫌になった。
「君の大丈夫は当てにならないんだけど。」
ヒメコという少女の動向を探るのであれば、イオン達と接点を作らなくてはならない。
接点=私の存在抹消にシンクを含めイオン達は猛反発したのだが、私の希望とディストの私が生きて居る事で起きるであろう有り難くない予測を前に私の死を承諾せざる得なかった。
「許したわけじゃないよね?」
掴まれた腕が少しだけ痛い。
シンク達の中でローレライ達は悪なのだ。
「赦す筈がないでしょう…」
私が契約者(エレメンタラー)でなかったなら海に突き落とされた時点で死んでいた筈だ。
また、ローレライに隠れてオールドラントを生き抜く事は不可能に近い。
過去も現在も子供も殺されて何も感じないほど人間を捨てたわけではないのだから。
掴まれたままでは身動きも取れないので、シンクを抱き寄せた。
「全てを無かった事に出来るほど私は寛大な心の持ち主ではないのだから。」
身長差の無い私達の距離は零。
トクトクと脈動する命の鼓動に私は安堵の息を吐いた。
あぁ、生きているのだな…と。
「愛しい貴方達を手放す元凶を恨まぬ筈がないのよ、シンク。」
「マリア、マリア…」
まだ2歳に満たないシンク。
「大丈夫よ。そう簡単に殺されたりはしない。消滅(復讐)を成し遂げてないのだから…」
愛しいアナタ(未来)を想って海の泡になって消えるなんて事はしないわ。
誰にも渡さない。
誰かに奪われるぐらいなら私の手で終焉を迎えましょう。
儚く微笑む女は虚像の人魚姫。
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bkm