美しく咲く黒薔薇(憎しみ)

ギスギスした、と表現出来るような雰囲気を醸し出す彼等にディストは溜息を吐いた。

マリアの流産を告げなければ良かったかもしれない、と後悔先に立たず。

「……誰の子だ?」

ポツリと呟かれた言葉に一斉に視線が私に集まった。

「そうですね、殺されなければ彼等にとって都合の悪い子供を身篭らせた相手は誰ですか?」

ニッコリと冷酷に嗤う導師イオンレプリカは、マリアを身篭らせた相手とあの小娘とローレライを抹殺しようと画策している。

「確証が無いと前置きしておきます。そして彼女には一切この事に関して話題に上らせないと約束出来ますか?」

グルリと彼等を見渡せば渋々ながら頷いた。

と謂っても彼等にとってマリアは絶対であるし、彼女を傷付ける事はしないだろう。

仮定の話だと忠告も入れて

「恐らくはレプリカルークの子供でしょう。彼女はローレライとヒメコと名乗る者に害されたと言いましたが、彼女がレプリカルークの傍を離れなくてはならない原因になったのは彼自身にもあると思います。ローレライと少女、レプリカルークにとって彼女が産む子供は自分達にとって害意があると判断したのでしょうね。」

子供はレプリカルークのだろうと告げれば

「どうして?何でよっ!マリア様が何をしたと謂うの?」

殺してやると呪詛のように繰り返すアニスに

「絶対に、赦さない、です…」

同じく憎悪を募らせるアリエッタ。

他も同じのようだ。

「でも、何故ローレライが?少女がマリア奏手に嫉妬して害したというのなら分かるけど…」

神とも等しい存在であるローレライが何故、唯人であるマリアだけを害したのか?

ティアの素朴だが確信を突く疑問に

「ローレライとヒメコと云う少女、そして恐らくですがレプリカルークも何かしら繋がりがあるのでしょう。」

仮定であり推論でしかならない事を述べた。

「アッシュの音素配列は誰と一緒でしたっけ?」

私の問いに

「ローレライだね。」

シンクが答える。

「まさか…」

真実かは定かではないが、事実に一番近い答えを導き出したアッシュの疑問を

「そのまさかですよ。」

私は肯定した。

「どういう事、ですか?」

アリエッタと同じく分からないという顔をする彼等に

「レプリカルークの完全同位体はアッシュです。アッシュの完全同位体はローレライ、此処までは良いですか?」

噛み砕いた説明をする。

「レプリカルークとローレライは完全同位体だと云う事は理解出来ますね?」

私が言いたい事が解った彼等は真っ青な顔をした。

「……第二のローレライ、ですね。」

イオンの言葉に一同が黙り込む。

「マリアと彼女の子供が狙われたのは多分、彼女が契約者(エレメンタラー)だからです。彼女の子供は、彼女を凌ぐ存在になるのでは?」

古の巫女の力と記されている契約者(エレメンタラー)の力は、精霊を縛る存在(もの)。

ローレライも危惧したのかもしれない。

まだまだマリアを取り巻く不自然な事象は解決すらしていないのだが

「あちらの出方をみてから今後の事を考えませんか?」

ローレライが本格的な敵になるとすれば、対策の二つや三つぐらいは考えておく必要がある。


マリアを取り巻く子供達。

美しく咲く、黒薔薇(憎しみ)は神をも敵に回した。



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bkm
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