-SIDE ヴァン-
聖女と祭られているヒメコという少女を観察したが、特に私の障害になるような事はないだろう。
治癒師としては優れているがそれだけだ。
巧く利用すれば計画の役に立ってくれるだろう。
ダアトでの任務を終え、久しぶりにルークの様子を見に来た。
しかし予想外の事が起きた。
「何故お前が此処にいる?」
ルークの傍にいるマリアを見て呆然と零れ落ちる言葉。
「異な事を仰られるのですね。主総長、貴方が私達をケムダーへ送り出したのでしょうに。ケムダーは立派に立ち直りギルドで生計を営んでおります。ダアトも少なからず恩恵を受けているではありませんか?今はまだダアトの庇護にあるケルダーの代表者代理として私が此処に派遣されてもおかしい話ではないでしょう?」
淡々と述べられる言葉に一瞬眉を顰めた。
「それもそうだな。そうだ、ルーク稽古をつけてやろう。」
ルークとマリアを離す為に私はルークが喜ぶ稽古をつけようと誘う。
ルークが口を開く前にマリアが私からルークを庇うように立った。
何なんだ?
「……誰に向って呼び捨てにしているのです。」
冷然とした眼で私を見るマリア。
「何を言っているのだ?私はルークに用事があるのだ。マリア、そこを退きなさい。」
命じれば彼女は私を一瞥し
「無礼者っ!この方をどなたと心得る!貴様、よもや主総長を騙る罪人かっ!」
鞭が飛んできた。
咄嗟に鞭を交わすが縦横無尽に撓る鞭に裂傷が生み出される。
「待て!何をするっ!」
非難の声はマリアがいつの間にか完成させた譜陣が発動し、光の剣が全身に降り注いだ。
激痛に膝を付くと首にスラリと剣が当てられる。
「ルークっ!!」
自分を妄信するレプリカを見れば視線を逸らされた。
何故だ!?
剣の鞘で殴り飛ばされた。
「マリア様、どうなされました!?」
モスグリーンの軍服に似た服を着込んだ見知らぬ者達が慌しくマリアとルークに駆け寄ってくる。
「ダアトの主総長の名を騙る罪人を捕まえた。念の為、グリムゾン様にヴァン・グランツ総長から先触れがあったのか確認を。ダアトには私から連絡を入れる。譜術を使うやもしれぬから猿轡を噛ませ、譜印を施した上で最下層の牢へ連れて行け。」
一斉に取り押さえられた。
「何故だ!ルーク、私が分からないのかっ!?」
非難を込めてルークを睨めば、マリアがルークを庇うように前に出て鞭で殴り飛ばされた。
「無礼者っ!此処はキムラスカ・ランバルディアでも王に次ぐ高位であるファブレ公爵邸。ルーク様は次期キムラスカ王であらせられる。ダアトの主総長の名を騙り、故意にルーク様を貶めるとはよもやその首一つで賄えると思うな。」
撒きついた鞭が首を締め上げ私の記憶はそこで途切れた。
生きている事こそ貴方の罪なのよ。
クツクツと嗤う、哂う、わらう、ワラウ、ヤハウェ・エロヒム(支配者)