-SIDE ルーク-
マリアから様々な事を教わった。
マリアだけは俺を馬鹿にしない。
分からなければ聞いて学べば良いと教えてくれた彼女は、俺にとって大事な奴なんだ。
俺の周りには、以前の俺ばかりを見て俺をみない奴等ばかりだから。
ヴァン師匠とマリアだけは違った。
いや、ヴァン師匠ともマリアは違う。
最初は何が違うのかよく分からなかった。
でも今は分かる。
ヴァン師匠は、俺が知識を着ける事を善しとしない。
『眼は口ほどに物を言うという格言があるの。ルークを眼に映す彼の眼を一度見てみれば良いわ。』
マリアの言葉に俺は周囲を観察してみる事にした。
憐み、恐れ、蔑み、侮蔑、殺意、様々な眼で俺を見る彼等。
怖かった。
気安く接してくれていたガイでさえも本の時折、明確な殺意を滲ませた眼で俺を見ている。
愛を囁く幼馴染は俺が好きなんじゃない。
キムラスカの色を持つ俺の髪と瞳が好きなんだ。
憐れむだけの母上がくれるのは親としての愛情ではなく、王族らしくなくなった息子に対しての落胆と自身への憐み。
厳格な父上の眼はいつでも見限れるようにと物で俺を見ていた。
記憶なんて関係ない。
学んでいけば、知ってしまえば、どれだけ此処が異常なのかを俺は知った。
そんな中で心の支えだったのは、中々会えないヴァン師匠とマリア達のお蔭。
ケムダーでは預言は重要視されないと云う。
知る事は恥ではないと教えてくれたマリア。
知る努力をし無い事が恥だと諭してくれたマリア。
知る事が怖いと零した時、親身になってくれたケムダーの人達。
だから久々に稽古にやって来たヴァン師匠が俺を見る眼に絶望した。
この人は俺を蔑んでいるじゃないか!
自分だけは味方だと甘言を囁くのは、俺を自分の良い様に操り人形にしたいからだ。
上下関係があるのも、身分があるのも、礼儀があるのも、全て世の中の常識なのにヴァン師匠は故意に教えてくれなかったんだ。
きっと聖女様と崇められているヒメコって奴も同じ人種だ。
だから俺は俺が一番信頼出来る人に相談した。
俺がどれほど無知なのかを遠くない未来に知る。