ルーク・フォン・ファブレことレプリカルークは純粋という言葉が似合う子供だった。
聖女様は、ダアト所属の私を利用したいのでしょうけど私の部下が連携して阻むので会話は全て事務的なものばかり。
それでも彼女は私が貴女を心酔しているかのように勘違いしているのだから嗤ってしまったわ。
聖女を祭り上げるファブレ家で公爵子息は異質だった。
流石はアッシュの完全同位体かしら?
彼だけは聖女様を一線引いた目で見ていた。
だから興味を持ったの。
まぁ、接触して取り込めるようなら取り込むつもりだったのだけれどもね。
ふふ、嬉しい誤算だったわ。
レプリカといえど刷り込みも無く育った彼の精神年齢は幼子。
周囲からは肉体年齢と同じものを強要されているので合せているのだけれども、それがどれほど苦痛なのか彼等は理解していなかった。
だから私は彼を公で無い限りは名前で呼ぶ事を赦されたのだけれども。
「なぁ、何でマリアは色々な事を俺に教えてくれるんだ?」
貪欲に知識を吸収しようとする幼子の素朴な疑問に私は
「探究心があるからかしら?知識を求め、活用し、考える。自ら考え行動する事を放棄した人間でないから私はルークに教えるのが楽しいの。」
柔らかく笑う。
「う〜ん、難しくてよく分からなねぇーけど考えない奴には教えないって事か?」
「そうね、私は優しい人間ではないもの。」
予言に従うユリアのお人形さんを助けたいなんて思わないから、ね。
「ルーク、さっき教えた問題の復習をしましょうか?」
私はさり気なく話題を逸らした。
私は彼に教えていた勉強の再開をする。
聡い幼子は、この自分を取り巻く周囲が異常であると気付く事でしょう。
聖女と崇められたアノ子が異様だと危惧するでしょう。
だから私は貴方に私の持つ全てを教えるの。
ヴァンに傾いている信頼も全て私が掠め取ってあげる。
早く気付いて。
そして壊れて。
世界に自分に全てに絶望して欲しいの。
だってそこに私が望むべき存在(もの)があるのだから!