血塗れのメビウス
預言の年が近付いている。

私は久々に本業であった情報屋の仕事をした。

勿論、シンクに拝み倒して有給を貰ったわよ。

手始めにアクゼリュスを何とかしなければならない。

私としては崩落しようと関係ないのだけれどもアノ女が出しゃばるに決まっているもの。

自分はユリア再来の聖女と疑わない馬鹿な女。

貴女の役目を奪ってあげる。

本当の自分をスッカリと頭から消え去った貴女。

義賊である漆黒の翼のアジトと呼ばれている酒屋に私は旅人として訪れた。

「ブラッディ・マリーを頂戴。」

バーテンにカクテルを頼むと血のように赤いカクテルが運ばれてくる。

ウォッカをベースとしたトマトで割ったカクテルに私はクスリと嗤った。

酒を煽るペースを上げて、さも酔ったように見せかける。

「ねぇ、知ってる?アクゼリュスにいたら死ぬそうよ。」

小さな独り言に聞き耳を立てる彼等に私は知らぬ振りをして続けた。

「アクゼリュスに恋人がいるの。誕生日も近いから恋人と一緒にダアトに預言を詠んで貰いに行ったのよ。」

カラカラとグラスを鳴らしながら語る。

「私と彼は結婚を詠まれていて凄く嬉しかったわ。子供も直ぐに出来ると言われたのにアクゼリュスで恋人は瘴気に侵されて死んでしまったの。」

ドンっと置いたグラスの音が意外にも大きな音を出した。

「預言に瘴気は詠まれていないって嘘を吐いたのよ!だから調べたの。ダアトはアクゼリュスを見殺しにするのよ。」

ボロボロと伝う涙を拭わずに

「知ってる?キムラスカの聖女様は、アクゼリュスが滅ぶ事をご存知だったのを…ホドを預言で見殺しにした癖に、また見殺しにするのよ。」

荒唐無稽な話もホドを出されたら信憑性が湧くでしょう?

ほら、彼女達が私の話に興味を示した。

「ごめん、マスター。」

私は多めにお金を払って酒場を後にする。



あはははは!

尾行してくるなんて予想範囲内。

そうでなくちゃツマラナイ。

違っても他の手を打つけど!

「ちょっとアンタ待ちな。」

漆黒の翼のお頭さんに呼び止められる。

「嫌よ、どうせ教団の人間なんでしょ?私を殺しに来たわけ?」

足を止めずに走った。

まるで鬼ごっこみたいね。

「私はダアトの人間じゃないよ。アノ話は本当なのかい?」

トラウマだものね、ノワールさん。

「そうやって私を口封じするんでしょ?魔界に存在するユリアシティの事を知った私を!」

警戒を解かない振りをする私にノワールは

「私は漆黒の翼の頭をやってるノワールってもんさ。アンタの話を詳しく聞きたい。危害も加えない。」

信用を得る為に正体をばらした。

「漆黒の翼…義賊で有名な?本物なの?」

戸惑ったように言えば彼女はバッチを放り投げた。

刻印の刻まれたバッチは正しく漆黒の翼に由来する物。

抵抗が無くなった私にノワールは

「アンタが言う噂を嘘だって否定しないさ。だから詳しい話を聞かせておくれよ。」

優しく諭すように呼びかけてきた。

私はそれに頷くようにノワールに着いていく。

ふふ…あはははは!

預言って凄いわね。

ねぇ、ローレライ?

貴方が詠んだ預言を憎む存在(もの)達が存在するわよ。

聖女と持て囃されている貴女を嫌悪する存在がいるわよ!

私は秘預言の一部とユリアシティの話を彼女にした。

私の話が嘘だと思うならユリアシティへ行けば良いと、ね。

勿論、行き方は教えたわよ。

きっと彼女は行くでしょうね。

そしてアクゼリュスの消滅も信じるでしょうね。

ねぇ、貴女?

聖女と呼ばれるだけで何もしてないと種を撒いてあげたわ。

大輪の花を咲かせるのはいつかしら?






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