僕は知っているんです。
僕のオリジナルがマリアを愛していた事を、僕は知っているんです。
アリエッタには親愛の情を。
マリアには激情を。
恋人に囁くような甘い情ではなく、独占欲で満たされた情だと云う事を僕は知っているんです。
シンクにはその記憶が引き継がれていないみたいで、だから僕だけの秘密なんです。
『殺したいほど嫌い』
と言い放ちながらマリアを抱いたオリジナル。
それを寛容したマリア。
マリアが本当に望んでいる事なんて僕にはわかりません。
平凡な容姿だと人は言います。
確かにそうかもしれません。
でも彼女は非凡なんです。
ふとした仕草、表情、立ち振る舞いに魅せられるんです。
男女問わず虜にするマリア。
僕はイオンだけれどもイオンではない。
慈悲を振り撒く優しいお人形の導師ではない。
マリアの邪魔をするのであれば、僕が全てを排除します。
世界を滅ぼしたいと願うなら僕は喜んで賛同しましょう。
シンクも知らない僕の名前。
マリアが着けてくれたんです。
エーメルリア・イオン・ガース ニクス、これが僕の名前。
マリアが僕だけに送ってくれた名前なんですよ。
「エーメ?」
優しく残酷に微笑むマリアに僕は笑った。
もっと僕の名前を呼んで下さい。
貴女は世界を敵に回すジャンヌ。