貴方が私を希望だと言いました。
違います。
私こそ絶望を与える執行者(パンドラ)
「マリア様!」
「マリア姉様!」
仲の良い少女達は私を見つけて走り出した。
両手を広げれば嬉しそうに抱き着く少女達。
後ろにはシンクとイオンの姿が見えた。
「二人とも久しぶりね。シンクもイオンもこっちにいらっしゃい。」
遠目に見ていた少年二人を呼び寄せる。
因みにシンクとイオンの間に確執はない。
互いに羨ましいと思っているんだもの。
誤解が解ければ兄弟として打ち解けるのは早かったわ。
イオンは嬉しそうに、シンクは照れくさそうに私の元へ寄ってきた。
「随分帰って来るのが遅かったね。」
憎まれ口を叩くシンクに私は苦笑を漏らす。
「ユリア再来の聖女様を見に行ってたの。」
本当に不愉快だったわ。
私の顔で自分の力でもないのに偽善を振り撒く様は怒りを通り越して呆れたものだもの。
子供達の前だからそんな事は言わないけれど。
「ユリアの再来って嘘臭っ」
辛辣なシンクの言葉に
「そうですね。ダアトにいるならまだましもキムラスカにいるのはおかしな事です。」
ニコニコとイオンが同意し
「単なる第七譜術師なだけじゃないの〜」
アニスが鼻で笑い
「私、見たことある、です…アリエッタとアリエッタのお友達を見る眼と一緒…あんなのが聖女、違います。」
ギューっと人形を怒りに任せて抱き潰している。
「上辺だけって事か、アホらし」
ブチブチと不満を漏らす彼等を私は宥めた。
彼等にキムラスカのお土産を渡し、他愛も無い話に盛り上がる。
ねぇ、ユリアと持て囃されている貴女、倖せでしょう?
でもね、パンドラの箱を開けたのよ。
残っているのは絶望だけだと覚悟してね?