傲慢で世間知らずな貴女。
本当に人を苛々させるのが上手ね。
自分本位で身勝手で自己中心的で独裁的な所がアノ娘と髭にそっくりだわ。
ユリア、ユリア、ユリア!
忌まわしき魔女の子孫。
「反抗的な眼ね。」
私を憎悪に燃えて睨み付けるティアを見てクツリと嗤った。
「これはユリアに対しての侮辱だわっ!!」
声を張り上げて抗議をする愚か者。
貴女の同僚が明確な殺意を持って貴女を見ている事に気付かない愚鈍さに私は流石髭の妹と感心した。
撓る鞭によって無様に転がるティアに
「上官の命令は絶対だと教わらなかったのかしら?」
ニコニコと嗤って、哂って、蔑んであげる。
軍属として前髪で視界を作るティアの髪を掴む。
悲鳴と抗議の声が上がるが無視。
「ティア・グランツ、選べ。軍を辞してダアトから出て行くか、私の下で軍人として再教育されるのかを!」
私はどっちでも良いのだけれどね。
吐き捨てた言葉に彼女は
「私は、私はユリアの子孫なのよ!こんな事が赦されるはずはないわっ!!」
狂ったようにユリアの名を出した。
「自ら後衛だと宣言し、接近戦の訓練に参加しない。詠師のお言葉に下っ端の一兵卒が異を唱える暴挙。後衛としても譜術師としても使えない軍人モドキ。詠師会でも君から軍位剥奪し、ダアト追放の話も出ていたんだよ。」
豚と髭が赦さなかったけどね。
「ダアトの再教育は軍人として失格の烙印を押された者がなるの。そうティア・グランツ君のこと。私も暇ではないの。第五師団の副官をしているのだから、ね。大詠師と総長たっての願いで私が教育係り収まる事で貴女は軍人でいられるのよ。」
グチャグチャに圧し折ってあげる。
「選べ、ティア・グランツ。故郷に帰るか、私の下に残るか!」
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「ティア、上手に音素を扱えるようになったわね。」
私は成長したティアを見た。
「あ、有難う御座います。マリア奏手!」
態度も軍人らしくなった彼女に私は笑う。
「いえ、私などまだまだです。」
真っ赤になって俯くティアの頭を優しく撫でた。
彼女は気恥ずかしそうに、でも嬉しそうに私の手を感受する。
「本当の意味でユリアの子孫らしく、軍人らしく成長していくティアの努力を私が見ているのよ。着実に貴女は優秀な軍人として成長しているわ。」
高いプライドとユリアの血…
故に孤独だった少女は
「マリア奏手…」
自分を理解してくれる唯一人の人として私を偶像化し崇拝した。
「ティア、私が見ているわ。」
傀儡の少女は倖せに笑う。
ミルゴーロド(復讐する妖女)は未来を描いて暗く嗤った。