ドロシー
哀れな子。

身代わりの子。

私の大事な、大事な可愛いドロシー(お人形さん)

被験者イオンの死は、アリエッタの人の現実(せかい)にとって唯一無二の拠り所だった。

アリエッタは獣でありながら人という珍しい少女。

故に人間の群れに馴染む事が出来なかった。

彼の死を境にアリエッタの私に対する依存は加速していく。

私と離れるのを極端に嫌うようになった彼女の傾向に私は嗤う。

「マリア姉様、此処に居たです、…」

ギュっと抱き付いてくるアリエッタを抱き締め

「私の可愛いアリエッタ、私は何処もにも行かないわ。」

抱き締めた。

二三度撫でれば安心したのか彼女は抱き付いていた腕の力を少し緩める。

「マリア姉様、髭が呼んでる、です。」

全幅の信頼を寄せるアリエッタの言葉に私は

「そう、分かったわ。私の可愛いアリエッタに伝言するなんて、お仕置きが必要かしら?」

髭の制裁をどうしようかなと考え込んだ。

「髭は、マリアをシンクの所に配属するって言ってた、です。」

彼女の中のヴァン・グランツの信用は地殻を突き破っているのだろうね。

まぁ、被験者イオンの死、ホド消滅の真実を暴露された挙句に死人を生き返らせるという甘言がトドメになったのかしら?

ふふ、作り出されたレプリカの子にまで嫉妬してくれる可愛いアリエッタ。

「ふふ、私の可愛いアリエッタ。私は此処にいるわ。いつでも来なさい。」

甘い、甘い、毒を吐く。

アリエッタはコクリと頷き満面の笑みを浮かべた。

私は主総長の執務室と向かう。

あぁ!

もう一人のドロシー(お人形さん)に会いに行かないと!


ねぇ、私だった貴女、貴女の理想通りの未来(せかい)じゃなく、私が彩(えが)く世界の一歩を踏み出したわ。



密やかにOZ(物語)が動き出す。




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