秘預言の全容を知って私は愕然とした。
滅びの道を歩むのか!!…と。
導師イオンが何故、私に秘預言を打ち明けたのかは知らない。
イオンは嘘吐きだが、大事な事を嘘で誤魔化すような者ではない。
胡散臭い笑顔か沈黙で答えないだろう。
「僕はね、マリア、貴女が嫌いなんですよ。」
いつだったか彼が私に言った言葉を思い出した。
握り締めた拳から血が滲み滴り落ちる。
彼は理解(わか)っていたのだ。
私が誰かに雇われて居る事を!
「雄弁は銀、沈黙は金とはよく言ったものだ。」
敢えてイオンが私に秘預言の全容を教えたのは嫌がらせに過ぎないのだろう。
秘預言をそのまま彼に報告すれば王の耳、即ちピオニーが知る所となる。
預言から離れているとは云え、民は預言に依存しているのだ。
国が混乱するのは必死だろう。
キムラスカは論外だ。
アレはトップが腐っているから救い様が無い。
私は筆を走らせた。
手紙を出して4日目に返事が来た。
会って欲しい人がいると、エンゲーブで待つことも記載されている。
私は有給を利用してエンゲーブへ向った。
そこで出逢ったのは私にとって予想外な人物。
彼にとっても私は予想外だったのだろう。
「…マリア?」
呆然と呟かれた名前に私は溜息を吐きたくなった。
娼婦紛いな踊り子と違い情報屋は立派に裏社会に属していると云っても過言ではない。
彼にこの世界の理を学んでいるのだ。
彼にとったら教え子も同然だろう。
「初めまして、陛下。お久しぶりね、フランツ。」
どちらもピオニーを称するモノだもの。
私は開き直ってニッコリと笑みを浮かべた。
「時間が惜しいの。本題に入らせて貰うわ。」
私は導師イオンから聞いた惑星消滅預言を彼等に告げる。
アクゼリュス崩落を皮切りにキムラスカとの戦争が始まる。
マルクトはピオニーの血で持って滅びを告げ、人々の災いの引き金を引いた。
やがて病魔はマルクトを飲み込み、キムラスカに一人の男によって齎され人は滅びの道を歩む。
ラストジャッチメントスコア。
私から全てを奪った彼女を消しても人類滅亡なんて笑えない。
「マリア、その預言は本物なのか?」
信じたくないとばかりに呟いたピオニーに
「私の名に掛けて誓うわ。」
嘘偽りではないと告げた。
私の名前には特別な意味がある。
その話は追々としましょう。
ピオニーは溜息を吐いた。
「……キムラスカは、この預言を知っているのか?」
「大詠師モースによって中途半端に伝わっているわ。アクゼリュスを聖なる焔で消滅させマルクトと戦争が起こりキムラスカが勝利し繁栄する所までね。」
私は一つ提案をする。
「 …」
狂った女は薄暗い嗤いを誰にも咎められずに漏らした。