-SIDE エイコ-
また滅びちゃったわね。
やっぱり救いなんて要らないんじゃない?
何回目かマルクトの滅びから始まりオールドラント滅亡した時に呟いた言葉。
キムラスカよりも飯美味天国だったのでついつい色々と居座ってたけど、やっぱり最期は滅びるのよねぇ。
さて、どうしたものかしら?
アホ眼鏡調教から始まり、ブウサギ皇帝を皇帝にしなかったり、洟垂れを下僕化したりと良い思い出だわ。
どっちにしろマルクトの最期の王が終焉の鍵を握っているならマルクト帝国を民主制にすれば良くない?
大体マルクトはキムラスカから独立する以前は大小の国々に分かれていたのだし、連邦国家でも良いと思うのよねぇ。
あと種馬は必須よね。
ピオニー以外どう頑張っても鬼籍に入っちゃうし、鬼籍に入る前にガンガン子供を作って貰わないと!
ピオニーはホモみたいだし(勘違い)
滅びるオールドラントを見ながら言いたい放題にして言えばローレライがガン泣きした。
「どうしてそう薄情なのだ」
「滅びる星を哀れだと思わぬのか??」
「我の嘆きが聞こえぬと言うのだな!!」
等などと愚痴られても困るのよ。
キャンキャンと余りにウザいから仕方なくローレライに
「さぁ、行くわよ。時間は三馬鹿の子供時代にしましょう。」
逆行の合図を告げた。
私に文句言い足りない様子のローレライを蹴り飛ばして私と下僕は時を巻き戻した。
-SIDE ローレライ-
どんなに星の滅びを迎えてもエイコエイコの心に波紋を投げ掛ける事すら出来ないでいる。
星が我が愛する存在が星の滅亡と共に歩んで行く。
なのにエイコには我の嘆きは届かない。
この鬼っ!
と罵れば華奢な手で我を鷲掴みにして捻り潰そうと圧力を掛けてくるのだ。
鬼が駄目なら魔女だ!
と思っても怖いので口に出せないが…
何度目かの逆行の末にエイコは予言のキーパーソンになるマルクト親父組の幼少期を指定して逆行する事になった。
そして予想外な方向でエイコは彼等を調教して行った。
マルクト皇帝になる筈の男はマルクト帝国へ牙を剥くテロリストの旗頭になり、洟垂れは参謀、眼鏡は実行部隊を指揮している。
何てこった!!
皇帝が犯罪者にジョブチェンジしてどうするよ??
そんな我の必死の叫びも
「別に最期は滅ぶんだもの。良いんじゃない?」
マルクトが滅ぶ前提で話をするエイコ。
マルクトが滅びたら星の滅亡が早まるではないかっ!?
と抗議の声を上げれば、エイコは
「別にマルクト領土を滅ぼすつもりはないわよ。マルクト帝国という名前がなくなるだけで、別の名前の国が出来上がる。そうね、例えばマルクト連邦とか?」
名前を変えれば少しは星の強制力っていうの?
そこから外れるかもしれないと思うのよね。
と宣った。
それもそうか、と考え直し我は予言の年まで大人しくする事にした。
現在旧マルクト帝国は鎖国をしている。
原因はエイコの一言だったりした。
「最初に星の滅びで滅ぼされる地って此処なのよねぇ。」
アクゼリュスの瘴気より内々に世界を調べ回っていたジェイド達にポツリと零した秘予言。
まぁ、エイコに関して秘予言は予言に在らずだが…
「そんな話聞いてないぞ??」
素っ頓狂な声を上げるピオニーに
「あれ?言ってなかった??」
シラっとすっ呆けるエイコ。
「エイコ、ピオニーは無視して良いですよ。マルクトが滅びるだけではくオールドラントという惑星自体が滅びるんですか?」
ラボ帰りのサフィールの問いに
「えぇ、最終的にはオールドラントが滅びるわね。外殻大地の崩落もカウントダウン切っているし、セフィロト内部にあるパッセージリングの操作方法はまだ解読出来てないんでしょ?」
ダアト、アルバート、ユリアの三つの封咒の解析を研究した所、ユリア以外は大丈夫なのだ。
「肝心のユリアの子孫がねぇ…」
逆行した経験を省みれば予言の年に擬似超振動でタタル渓谷へキーパーソンと一緒に現れる筈なのだ。
が、性格が悪辣過ぎて近寄りたくないのよね、と苦々しく吐き捨てるエイコの言葉にユリアの子孫であるから…
と我は早々庇う事をしなくなった。
「パッセージリングを操作出来るようになったとしても問題なのが操作範囲なのよね。」
放ったらかしの地図にエイコは手際良くマグネットを置いていき
「ダアトは兎も角、キムラスカはバッチリとバチカルが残っちゃうのよ。」
きちんとパッセージリングがどの部分を担っているか簡単に説明して溜息を吐く。
「ダアトは最悪ですね。全てのリングが消滅してもダアトだけ力が集中するようになっていますよ。」
ジェイドの指摘にエイコは
「どうせ創設者の思惑じゃないの?真っ先にダアトを支えるパッセージリングは潰す事にしようと思うの。だって予言予言、ユリアユリアとウザイ連中はホド島と同じようにした方が良いでしょう?自分の身に起こって後悔すれば良いのよ。因果応報ね。」
クッキリ、キッパリ、ハッキリと救いの余地なしと宣言した。
「後はバチカルですよね…」
譜業爆弾でもバチカルに投下出来たら一番なんですけど、と物騒な事を呟くサフィール。
この三人の中で冷静に判断を下し、切り捨てが上手な人間に育った。
そして予言の年、我とエイコはルークとユリアの子孫を迎えにタタル渓谷へと向かった。
案の定、ユリアの子孫は
「私は襲撃も誘拐もしてないわ!それに擬似超振動が発生したのはルーク、彼方にも責任があるのよ!!」
ルークに責任転嫁している始末。
そんなユリアの子孫の態度に辟易したルークは、エイコを見て
「なぁ、お前もコイツの仲間だったりするのか?」
警戒半分に尋ねて来た。
「そんな頭の悪そうな輩の仲間って冗談でも嫌よ。」
なおも喚くユリアの子孫を余所にエイコルークに
「此処は旧マルクトのタタル渓谷。キムラスカは勿論、ダアトでさえも手が出せないに君と罪人の女は此処に運悪く来たわけね。」
端折って敵国のど真ん中に誘拐された事実を告げる姿に配慮の欠片すら無かった。
ずっとエイコと共にいるが、どうして人を思いやるという言葉がないのだろうか?
悲嘆に暮れる我を余所に
「じゃあ、俺は人質にされるのか?」
脅えるルークに
「ちょっと違うわ。ルークはどの道、キムラスカに今年殺されるのだから保護しようと思った矢先の出来事だもの。変なのがくっ付いているけど。」
衝撃的事実をドンドン投下して行った。
混乱しているルークを口八丁手八丁で言い包め、ついでにユリアの子孫に秘奥義を噛まして瀕死の状態でアジトがあるケテルブルクへと連れて行った。
「外は相変わらず騒がしいな。」
ルークの頭を掻き混ぜながら鷹揚に笑うピオニーに
「ちょ、頭ワシャワシャすんなよ!禿げたらどうしてくれんだよ?」
何気に被験者ルークことアッシュの悩みを的確に付くルークの言葉に笑いを押し殺すエイコ。
「それにしてもルークも此処に馴染みましたねぇ。」
子供にはホットケーキとココアが必須ですと、キッチンから持って来てルークを餌付けするサフィール。
「もう片方は馴染んでませんけどね。」
ユリアの子孫の相手が嫌だったらしく早々部下に押し付けて逃げてきたジェイドの言葉に
「仕方ねーって、アイツは自分中心に世界が廻っていると信じてると思うぜ?屋敷に襲撃した理由も『私の個人的な都合』で終わったぐらいだしな。」
フォローにもないフォローをするルークに大人組みがクスっと笑みを零す。
うむ、子供は偉大なり。
旧マルクト帝国の外ではキムラスカとダアトが戦争を始め、ダアトが最初に崩落し、次にキムラスカの大地が崩落してついには旧マルクト帝国全土とバチカルが残ったのだ。
何度も旧マルクト帝国へ手を伸ばそうにも鎖国は続き、キムラスカはとうとう飢えて死に絶える。
その数百年後、マルクト連邦は大地より噴出した瘴気によって死に絶える事となる。
ほらみなさい、ローレライ
臭い物に蓋とばかりに頑張ったのに
結局滅びちゃうんじゃない
次はダアトにしましょう
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bkm