-SIDE ローレライ-
あら?
滅びちゃったわね。
そう謂う運命なのよ。
第一回キムラスカ・ランバルディア王国の崩壊で山田エイコが呟いた言葉である。
予言の分岐点であるルークが生まれた年に山田エイコをオールドラントに送り、我は山田エイコのバックアップするべく色々と頑張った。
山田エイコという劇薬は、簡単にキムラスカ王を筆頭に上層部を傀儡にしてお祭り大国と名を馳せた。
ラテン系な国にしてみたかったのよねぇ。
と呟いた当人は、改革の筆頭者から見事に名前を外していたりする。
後に聞けば『私が楽しむ国であって、私がアホな国に仕立て上げた立役者として記録に残るなんて嫌だわ』と呟く彼女は鬼だと思う。
流石地獄の鬼を下僕にしていた女王様。
キムラスカを筆頭にオールドラントの滅びを前に冒頭の言葉を述べただけで哀しむとか悲観する等は一切ないのが凄い。
他の者達は絶望し、魂すら消滅したというのにこの図太さ。
流石、山田エイコ。
そして遣り直しに山田エイコは被験者ルークの母であるシュザンヌの誕生よりも前を指定して来た。
理由としては、予言の年だけが重要ってもんじゃないのよ。
前回の失敗を踏まえて今度は、もっと前段階でキムラスカを調教し直せば良い事よ。
と宣った。
-SIDE エイコ-
崩壊した世界を救ってくれって頭大丈夫?
と正気を問いたい山田エイコです。
快適な地獄で充実した毎日を過ごしていたのにローレライという疫病神のせいで別の世界救済活動という実入りのないボランティアをしている。
まぁ、一度も救済出来てないけどね。
そんなの私の知った事ではないわ。
まぁ、取り敢えず前回の失点を踏まえて今回は一味違ってオールドラント攻略しようと心に決めているのだ。
第七音素で構築されている肉体は割りと便利だったりする。
なので今回はインゴベルトとシュザンヌを私の手で直々に教育してあげようと思うの。
予言?
その辺はローレライに任せたわよ。
アイツは私の下僕だもの。
私の為に働くのが筋ってもんでしょう。
『ND1960年13月11日、キムラスカを祝福を齎すローレライの神子がキムラスカ・ランバルディア王家へ降り立つであろう。その者の名はエイコ・セイレーン。繁栄と滅亡の分岐を司る者である。』
と、まぁ色々と捏造してくれたのでその辺は抜かりない。
予言に傾倒しているから尚更である。
「インゴベルトにシュザンヌ、お勉強しましょうね。」
まだまだ幼い彼等に色々と教え込んだ。
人の使い方、国の動かし方、交渉術に戦術、心中把握の仕方のイロハに皇族としての心構えを教育(という名の洗脳)し、今では立派に予言アレルギーに(大爆)
彼等を害する者は全て秘密裏に超振動であの世へ送ってあげた私は優しい。
ギロチンで処刑よりも一瞬で痛みも知らずに逝けた方が幸せでしょ?
キムラスカを予言から自立させた一方で、私はローレライの聖女として地位を確立していた。
だって私が呼べばローレライは来るもの。
キムラスカはローレライに祝福されてるのよ〜
と大々的にアピールし、マルクトとの争いごとは悉く避けて通った。
ホド戦争なんてマルクトとダアトの自作自演だし、国民はそれを知っているからこそ余所者(マルクトとダアト)に良い感情を持ってない。
が、柔軟に対応出来るように国民の躾けをしたのは骨が折れたわね。
勘違いな逆恨みをするホド連中には監視を付け、ダアトに潜入捜査中のアッシュからは定期報告とルークへのラブコールが鬱陶しい事この上ないが専ら被害はレプリカルークへ皺寄せされるので問題はない。
ファブレ夫婦も小賢しいアッシュよりも純粋培養なルークが可愛くって仕方ないらしく、ローレライと親権争いを偶にしているのを見かけた。
そんなこんなで予言の年に厄介者は現れた。
師匠面してファブレ家に居座りガイと怪しい関係と専らな噂のヴァン・グランツを殺すのが目的という彼の妹ティア・グランツの襲撃である。
ポーンと私とルークは超振動でバチカルからマルクトの辺境へ飛ばされたのだ。
「襲撃犯の分際で私とルークに近寄らないで頂戴。」
意識が戻って開口一番に告げれば鬼も逃げ出す表情で
「失礼な事を言わないで!!私は襲撃なんてしてないわ!!」
と宣った。
「キチ害って本当にいるのねぇ。」
ポツリと零れた本音にルークが
「仕方ないよ、ダアトだし。」
ダアトで締め括った。
キチ団の総本山ダアトと認識しているルークに悪気はないのだろうが、ティアにとっては侮辱と受け取ったらしい。
「ダアトとは関係ないでしょ!?」
「関係あるわよ。だって貴女ダアトの教団員でしょう。きっと今頃ダアトに抗議文と賠償金請求や貴女の身柄引き渡し(死体でも可)を要求されてるわ。」
そう指摘してやればキーキと喚くので
「まぁ、襲撃犯を生かしておいても不愉快になるだけだから死になさい。鷹爪豪掌破!」
ルークの木刀を借りてオリャっとばかりにティアに奥義をブチかました。
一発で戦闘不能ってどんだけ弱いんだ??
どうせ生きていれば魔物の餌か街に辿り着ければキムラスカへ護送され公開処刑される予定なのだから別に良いか。
こうして私はルークの手を引いて渓谷を降り、キムラスカへ向かう。
途中、辻馬車と遭遇したので近くの村まで乗せてもらえないか交渉(という名の恐喝)し、無事にエンゲーブまで辿り着いた。
が、キチ団の長が何故が此処に滞在しており、単身でチーグルの巣に向かったらしい。
助けるギリも無いのでルークと二人で向かえを待っていたら翌日、彼はライガクイーンによって殺されたらしい。
ご愁傷様だな、ローレライ教団。
他人事だと思っていたらキチ団の導師守護役のアニスという少女とマルクトのジェイドという佐官が何故か和平強要してきた。
キチ団の導師守護役のアニスは自分の主を見す見す見殺しにしておいて
「はわ〜んvルーク様って公爵子息様なんですかぁ??私はアニスって言いますぅv」
ルークに擦り寄って来ている。
一方、己の失態で導師を殺したにも関わらずマルクトの佐官は
「ほう、彼方が公爵子息のルーク様ですか。導師には及びませんが良いでしょう。彼方達の不法入国の罪を帳消しにする代わりに和平に協力しなさい。そうすれば罪に問いません。」
平然と和平強要して来た。
おぉ、ルークの額に青筋が浮かんでいるわ。
後ろにいるマルクト兵も真っ青な顔をしている。
まだ常識があったのね。
「お断りだ。」
尤もなルークの言葉に憤慨して見下す言葉を投げ付けるマルクト佐官に
「マルクトはよっぽど戦争したいのね。良いんじゃない?」
ボソリと呟いて
「自国の皇太子が誘拐されて隣国へ難儀していた所を保護するわけでもなく、和平強要して和平が成立すると思っているなら御目出度いわぁ。ピオニー陛下の御子が生まれたらそうして和平を結べば良いのね。」
嫌味を言えば真っ青な顔をして黙った。
ようやく気付いたか馬鹿め。
だがもう遅い。
万が一にも和平が結べたとしても不平等条約の上にジェイド・カーティスの首は必須条件だ。
自分の命が風前の灯である以前にマルクトはダアトと戦争になる事を彼は理解しているのかしら?
いないのかもね。
無言になったジェイドを無視して私達はタルタロスから降り、そのままキムラスカへ向かった。
その間、何故かヴァン・グランツとガイ・セシルがルークを捜索するという名目で逃走しており国際指名手配犯としてオールドラントに極悪人として触れ回る事となっていたり…
大詠師モースはティア・グランツの失態と内政干渉によって大々的に処刑した。
勿論、ダアトに対して抗議文の末に彼は切り捨てられたとも言う。
トップをマルクトの佐官によって失ったダアトはマルクトに戦争を吹っ掛け、アクゼリュスは崩落し、何故か戦争はキムラスカにまで手を伸ばして三つ巴になった。
その為、パッセージリングの操作云々の前にパッセージリングの耐久が臨界点突破で世界は崩落した。
あらいやだ、ローレライ。
やっぱり滅びちゃうんじゃない。
次はマルクトにしましょう。
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bkm