君は輝くルイス

-SIDE 樋口アキ-


最近流行りの転入生って冗談よ。

ちょっとしたお茶目じゃない。

ドン引きしないでってば!

でもね、奈津子ちゃんって本当に面倒見が良いのよね。

だから女テニのマネにしちゃったv

ふふん、騙し討ち上等じゃない。

はいはい、自慢話はするなって?

「あー聞きたくないけど腐れ縁のよしみで話だけは聞いてあげるわ。で、何?」

目の前にいる鉄扉面を見据えれば眉間に鉛筆刺さるんじゃね?

と思うぐらい深い皺が出来ていた。

「頼む、田所を貸して欲しい。」

土下座せんばかりに真剣な顔をする手塚に私は

「奈津子ちゃんが良いって言えばね。」

超難題を吹っ掛ける。

鬼?

奈津子ちゃんを簡単に得ようなんて甘いわよ。

奈津子ちゃんのマネジメントの能力の高さを見て、他の運動部と熾烈な争いをしたんだもの。

男テニだけが優遇されるなんて砂糖にシロップと蜂蜜を混ぜたぐらいに甘いわ!

「あぁ、でも先に奈津子ちゃんを臨時のマネジにする事について部員に了承貰いなさいよ。あの子、面倒事が大嫌いだから。」

一人でも拒否ればあの子はマネジをしないわ。

だって部の空気が悪くなるじゃない。

それを自分で改善するわ!

というような女の子じゃないもの。

2chの板でアニオタを熱く語るのが趣味な彼女が、アメブロでブログ更新するのに心血注いでいる彼女が、今より時間を取られるなんて耐えられない!

と叫んで拒否るに違いない。

一歩間違えればリーマンに見える腐れ縁の顔を見て私はこっそりと笑った。



どっちにしろ彼女は輝くルイス(宝石)なのだ。




-SIDE 不二-



奈津子ちゃんが臨時でマネをしてくれるようになって、僕達の練習がスムーズになった。

後輩達も力を伸ばしている。

初日にファンクラブを一喝し、二日目には統括し、三日目には彼女達を顎で扱使う手腕には恐れ入る。

これで反感を買わないのだからある種の才能とも言えた。

「不〜二、また田所ちゃんを見てるの?」

ズッシリと背中にへばり付く英二の視線はクルクルと忙しなく働く奈津子ちゃんの姿。

「立海で不祥事を起したってどうしても思えなくって、ね。」

彼女をマネとして受け入れる時、揉めた事を覚えている。

手塚と大石の推薦とはいえ、不祥事を起した張本人を部に入れて調和を壊されたら迷惑だ。

全国優勝を目指すこの大切な時期に厄介ごとを抱え込みたくなかったのだ。

「本当だにゃー」

選手の応援に混じって奈津子ちゃんを応援する声もチラホラと上がる。

その度にとまでは行かないが余裕のある時は彼女は手を振っていた。

「でも、田所ちゃんを捨ててくれた立海には感謝しないとにゃ!」

それじゃなかったら彼女は今此処にいないのだと笑う英二に僕もそうだね、と同意する。

「3−6コンビ!!早くドリンク取りに来いっ!」

怒号と同時に衝撃緩和剤として綺麗に洗われたタオルに巻かれたペットドリンクが剛速球で僕達の手元に運ばれてきた。

「良い肩しているよね。」

受け取ったボトルとタオルに僕と英二は顔を合わせて笑う。

「奈津子ちゃん、ありがとう!」

「サンキュー、田所ちゃん!」

礼を言えば彼女は輝かんばかりの笑顔で

「どーいたしまして!てか、ボトルは赤いカゴ、使用済みタオルは青いカゴに入れておいてね!」

ちゃっかりと指示を出した。

あぁ、これだから彼女は面白い。

毎日の部活に彩(いろ)がついた。



君は光り輝くルイス(宝石)






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