美しき暁の女王誕生


-SIDE ミリア-


私は嘗てファブレ公爵家のメイドだった。

私は誘拐されてからのルーク様付きのメイドだったの。

誘拐される前は、貴族としての傲慢さとプライドの高さと優秀さを持ち合わせていた人間だったわ。

使える主として好感が持てるのか?

と問われれば否と答える事が出来たでしょう。

そして誘拐されて真っ白になって戻って来たルーク様は赤子でした。

他のメイドは以前のルーク様を求めていたけれど、私は赤子のようなルーク様を育てて行く内に母のような姉のような気持ちを持つ事が出来たのです。

優しさを表面に出す事が苦手なルーク様の優しさに触れる度に心惹かれたの。

しかし、あの忌まわしい日にルーク様はダアトの賊に連れ去られ外に弾き飛ばされた。

命を奪取する事も傷つける事も経験した事が無かったルーク様をあの女は木刀を持っていたというだけで最前線に立たせ戦わせたのよ!

被害者であるルーク様を保護せずに一方的な要求が飲めないのなら軟禁すると脅し和平の橋渡しを強要した死霊使い。

スパイ行為でルーク様の命までも脅かした導師守護役。

犯罪と不敬を見逃した導師。

世界を滅ぼさんと企む男と共犯していた同僚。

ルーク様がレプリカだからと軽んじられ、行動を想いを否定され続け、最期には命までも奪取された!

そして罪人達が英雄と褒め称えられる世界に私は憤ったのよ。

彼らはルークはいつか戻って来る、そう約束したからと口にするのを見て、誰が貴方達の元に戻るものですか!

何度怒鳴ってやりたかったか…

ルーク様の日記を抱き締めて憎悪を募らせる日々にルーク様を名乗る鮮血のアッシュが返って来た時、私は世界を呪った。

キムラスカの総意でアクゼリュスを落とした罪をルーク様に押し付け、外殻大地降下と瘴気中和、ローレライ解放を自分の手柄にした鮮血のアッシュ。

それを寛容した世界に私は絶望し、ルーク様の日記を胸に抱き命を絶ったのです。

そして私は、気付けば過去に戻っていました。

キムラスカの王女として、過去に戻っていたのです。

ねぇ、ルーク様。

貴方の心の片隅で良いのです。

どうか、私を想って下さいませんか?

昔の貴方の心にシュリダンの少女が住まう事を私は知っています。

また心惹かれるのでしょう…

私と違い彼女は美しい。

復讐と憎悪に塗れた私と違い清廉な彼女に心奪われたとしても、少しでも私を想って下さい。

いつか貴方を本当に解放出来るその日まで、私の隣に居て下さい。


白銀のドレスに朱色のローブを纏った美しきキムラスカ女王が誕生した日。

その隣には世界を救った英雄であるルーク・フォン・ファブレが寄り添っている。




-SIDE ルーク-


俺は知っている。

ナタリアがミリアだった事を。

俺は何回も逆行を繰り返していた。

最初は世界を救おうと必死だった。

でも世界は救えても同胞達を救う事は出来ない。

繰り返す逆行の中でミリアだけは、いつも俺の味方だった。

いつだろう?

ノエルからミリアに心惹かれるようになったのは?

世界を救う為に世界中を飛び回る中で、ファブレ家に俺の唯一居場所になってくれたミリアの笑顔を見るのを楽しみにしていたのは?

この気持ちが恋だと気付いたのは?

ミリアが生きる世界だから俺は瘴気中和をし、ローレライ解放を繰り返した。

何度も繰り返す逆行の中で瘴気中和の際にミリアが第七音譜術士だから瘴気中和に志願してくれたんだ。

命の保障が無いと何度も説明したけれど、ミリアは死ぬのなら一緒にと笑い、罪を償うのなら一緒に償いたいと告げてくれた彼女の心が嬉しかった。

そして俺はミリアに内緒で瘴気中和をせず同胞とローレライを音素帯に還した。

次に逆行する時はミリアを連れて行く事を条件にローレライに頼んで。

ローレライはミリアを死産と詠まれたナタリアとして転生させ、俺はレプリカとしてコーラル城へ逆戻りした。

逆行してもミリアは俺とアッシュを比べる事なく、俺を見下す事無く、見捨てる事無く、愛情を注いでくれた。

例え彼女に以前の記憶が無かったとしても矢張りミリアはミリアと変わりなく、優しいまま。

予言に傾倒していたキムラスカの体質を根本的に改革し、レプリカの地位向上や便宜を図り、そして俺を支えてくれる。

大好きで、大好きで、誰にも渡したくない。

愛しているなんて言葉だけじゃ足りないんだ。

キムラスカ女王が誕生した時、隣に俺が立てた事に俺は狂喜した。

例え彼女の心が他の誰かに向こうものなら悟られないように消し去ってみせるよ。

早くこの腕にミリアと俺の子を抱きたい。

「ナタリア(ミリア)、永久に愛している。」

何度時間を繰り返しても俺はミリアを愛している。



数年後、キムラスカに赤毛の双子が誕生し繁栄の一歩となった。







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