金を出せ!


-SIDE ピオニー-


朝焼け色の髪とペリドットの瞳を持つ美女こそキムラスカの紅玉と呼ばれている才女であるのは有名な話。

キムラスカではファブレ公爵がクーデターを起し、シュザンヌ夫人が王位に就いた。

そして目の前にいる彼女こそファブレ子息のルーク殿の婚約者であり、次期王の妻でもある。

ニッコリと微笑む彼女の瞳は笑ってはいない。

「真に残念ですわ。まさか和平を望んでいらっしゃらないとは…」

哀しげに伏せられる眼に

「そ、そんな事はない。リーナ殿、我が国は真に和平を望んでいる。これだけは信じて欲しい。」

戦争回避の為に言葉を募った。

しかし

「此度の死霊使いは、我が婚約者を亡き者にしようとしたのですのよ。その責任はどう償うお積りですの?」

懐刀が聞いて呆れるとばかりに溜息を吐きサクっと処刑しろよと要求される。

「まさか身分剥奪して監視付きの研究者にすると申すのではありませんわよね?」

先回りの如く言い当てられた言葉にウっと言葉が詰まった。

此処でYESと答えれば速攻でキムラスカと戦争が起きる。

隣に同席しているゼーセマンからはジェイドを処分するように眼で訴えられた。

「……ジェイド・カーティスの身柄はキムラスカに譲渡する。」

そう答えればリーナ嬢は良く出来ました、とばかりに良い笑顔で

「当然ですわね。セシル、明日闘技場にて公開処刑を行う触れを出して下さいな。」

公開処刑の指示を飛ばす。

きっと俺とジェイドが幼馴染という事も踏まえての嫌がらせなんだろう。

「そうそう、陛下にはキムラスカ一の特等席を招待致しますわ。」

断ったら戦争と副韻がついているが…。

逃げ場が無いことに俺は肩を落とし是と答えた。

「それと和平もですが、キムラスカが被った被害総額の賠償金の支払いについてお話し合いしませんといけませんわね。」

うふふ、と可憐に笑っているリーナ嬢の手には分厚い紙束が…。

紙束を手渡され俺は恐る恐る内容を確認していく。

細かいガルドが記載されており、総額が国家予算半世紀分にも膨れ上がっていた。

何をした!!

ジェイドー

こうしてマルクトは目の前のキムラスカの紅玉に有り金を毟り取られる事となる。





-SIDE リーナ-


ピオニー陛下との会談という名の密約が終わり、私はマルクトとダアトが手に入った事にニッコリと笑みを洩らした。

胡散臭い髭も樽も大罪人と理解してない頭の足りないメロンにテンプレヒロイン導師にその守護役。

そして和平すら打ち壊そうとした張本人である自称天才の死霊使い。

本当に良い仕事をしてくれたわ。

戦争を起さずに国が手に入ったんですもの。

ルークがキムラスカに戻って来て直ぐに彼等は処刑された。

まぁ、偽姫とデコっぱちに関してはシュザンヌ様直々に罰を下したみたいよ。

デコは種馬にし、他の女を抱いている様を延々と偽姫に見せ付けて壊すって素敵よね。

流石、シュザンヌ様。

私も見習おうかしら?

ルークには優しいままでいて欲しいからこの事は秘密なんだけどね。

「リーナ様、本日の書類で御座います。」

決済書を持ってきた部下に礼を良い私は書類に目を通して行く。

うふふ、ダアトは事実上解体したので献金という項目は削除された。

そしてマルクトは事実上、キムラスカの属国に成り果てたとはいえ賠償金を支払い続けなければならない。

「これで新しい事業を始められるわね。」

医療保障や教育機関、労働者育成制度等を充実する事が出来る。

マルクト国民の不満がギリギリに出るまで搾り取るのが良いわねぇ。

私はウッキウッキとしながら書類にサインして行く。


さぁ!

王族を害した罪は重いのよ。

端金で済むと思わないでね?



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