追剥キムラスカ

-SIDE リーナ-


予言中毒ダアトの胡散臭い髭の妹が私のルークを誘拐した。

その報を聞いた時、キムラスカからダアトへの献金は0にしたわ。

そして寄せられてくる有得ない報告書に私は般若を背負っている事だろう。

「ふふ、あはははは、ふっふっふふ……」

どこの悪役だと突っ込みが入りそうなドスの効いた笑い声にドン引く事なく淡々とルークに起こった不幸を報告する優秀な影達。

「キムラスカも馬鹿にされたものですのね。」

予言に詠まれていないから罪はない?

ユリアの子孫だから罪はない?

王族浚っておいて罪がないだと!?

未成年略取・誘拐・不法侵入・テロ行為・傷害罪・殺人未遂罪etc上げたら限が無い。

「いつからキムラスカはダアトの属国になったのかしら?」

そろそろシュザンヌ様が王位に就いていてもおかしくないわね。

樽を傍に置いているんですもの。

さてダアトに抗議文を書こうとした所で

「リーナ様、大変です!」

顔を真っ青に入ってきた兵士の手にはヨレヨレになった紙。

「ローテルロー橋がマルクトの軍艦によって大破しました。」

それを聞いた時に滅べマルクトと私の口から零れた事は致し方ないと思うのよ。

だって物価高騰するじゃないの!!

「しかもマルクト軍にルーク様が拘束されました。」

保護を要請したにも関わらず拘束とは良い度胸だ。

ボキっと折れたペンを傍メイドが新しい物と交換する。

「経緯を話しなさい。」

「賊に誘拐されエンゲーブにてマルクト軍に不法侵入として拘束、和平の取次ぎをしなければ軟禁すると脅迫されたとのことです。行方不明だった導師も同席しており、何故か賊を捕まえる事なくルーク様だけを牢へ。折しも導師を奪還する為に乗り込んで来た信託の盾のシンク謡士とアリエッタ響士、ディスト響士に保護されました。」

カタカタと報告する兵士を見れば

「死霊使いはルーク様を見捨て、あろう事か戦艦タルタロスを脱出時に爆破しました。」

報告する声も怒りで震えていた。

「ルークは無事なのですね?」

一応、安否の確認をする。

無事でなければもっと慌しいもの。

「はい、シンク謡士とアリエッタ響士、ディスト響士の協力により無事にタルタロスから脱出しております。」

その言葉を聞いて私はホッと安堵の息を吐いた。

「今から抗議文を書きます。セシル、貴女はダアトへ樽と髭の首を持って行きなさい。そうね、マルクトへはカインが行きなさい。」

私はサラサラと抗議文と今までの報告書を纏めダアトには一個大隊をマルクトには一個小隊を向かわせた。



-SIDE ダアト-


導師、大詠師、主席総長のトップスリーが不在の中でキムラスカからダアトへ大詠師モースとヴァン・グランツの首が送り付けられた。

事実上の宣戦布告である。

樽と髭の首に添えられていた抗議文と報告書にトリトハイム詠師等は頭を抱えた。

あのキムラスカの紅玉と呼ばれる慈悲深い姫の逆鱗に触れたのだ。

手紙を直訳すれば

『おんどれ!うちの婚約者を誘拐したクソが王族を盾にし戦闘強要。そして不敬三昧を導師がスルーしたんですけど?一回消すか?てーか滅べダアト。』

でも事実。

キムラスカよりダアトに対しての献金は0になり、賠償金としてダアトの予算向こう1世紀分を請求された。

滅ぶか、賠償金を支払うか究極の二択に残された詠師達は取り合えず使者のジョゼット・セシルに土下座した。




-SIDE マルクト-


賢帝と名高いピオニーはキムラスカの紅玉の使者から渡された抗議文と報告書を見て絶句した。

此処に首を括れる木があればキュっと括っただろう。

使者がピオニーを見る眼は絶対零度氷点下並みだ。

「マルクトでは保護する要人を捕縛するのが保護だったのですね。」

ヒンヤリとした冷気が漂う中で違うと首を横に振る。

「しかも民間人を盾にするのがマルクト軍では当然だとは驚きました。あぁ、それはダアトもでしたね。」

何たる恥を曝したんだジェイドー!

と何処にいるか不明のジェイドに怒りをぶつけたい、が此処にはいない。

使者の怒りの矛先は皇帝である俺だ。

「キムラスカとの貿易には必須であるローテルロー橋を落とすなんて何を考えているんですか?」

いま始めて聞いた新事実に俺は泡を吹いて白目を向きそうになった。

しかしこれだけでは終わらない。

「和平に協力しなければ軟禁し、しかも誘拐した導師奪還の為にタルタロスが奪われた際にルーク様ごとタルタロス爆破とはマルクトは和平ではなく戦争をされたいのでしょうか?」

本当にな!!

俺がキムラスカだったら即効宣戦布告だよ(号泣)

「そ、それでルーク殿は??」

もう和平どころではない。

あんまりな事実に俺はルーク殿の身の安全を神に祈った。

「無事ですよ。和平はキムラスカとしても歓迎すべき事です。しかしルーク様の受けた仕打ちはキムラスカは忘れない。リーナ様より預かっている親書。」

使者より渡された親書を開くと

『テメーんとこのアホ眼鏡がローテルロー橋を落としやがったんだけど文句ある?しかもうちの婚約者を盾にした挙句、一歩間違えれば殺されてたんだけど。勿論、死刑確定しろよ。見に行ってやるから!公開処刑な。そうそう、賠償金として×××××ガルド支払ってね。じゃないと戦争だからシクヨロ!』

直訳するとこんな感じ。

でも間違ってない。

10年分の国家予算に相当するガルドにピオニーはついに意識を手放した。



これがオールドラント統一の第一歩となる。





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