奮闘するお姫様

-SIDE 姫宮かな-



有得ない!

有得ない!

此処は私の世界よ!

精市に幼馴染なんていなかったのに、どうしてそんな平凡な女が幼馴染なわけ?

そんな女よりも私が劣っているとでもいうの?

絶対に許さないんだから!

苛々としながら伸びた爪を噛む。

邪魔者は排除しなくちゃ!

だって私はヒロインなんだから!

本当は痛いのって凄く嫌いなんだけど、仕方ないわよね。

目に届く範囲にカッターとかで切り付けて行く。

痕が付く様に自分を殴った。

こんな痛いことも面倒な事も私がお姫様になる為には必要な事だと思えば耐えられるわ。



私は虐められたようにボロボロで同情を誘う様な格好で登校したの。

見て!

行き交う生徒が私に同情をしているわ。

うふふ、あの女をどん底に追い詰めてやるんだから!

「ねぇ、聞いて!私、有住河さんに虐められてるの!!」

こんなに可愛い私の言葉だもん信じない奴なんていないわ。

「姫宮の勘違いじゃね?」

口々に有住河が虐めをするはずがないと言う使えないモブ共。

アンタ達は私の言う事を聞いて有住河を虐めれば良いのよ!!

思い通りに行かないなんて本当にムカつく。

「わ、私が嘘を吐いてると言うの?」

ポロポロと嘘泣きをすれば馬鹿共は黙った。

ふふん、こんなに可愛い私が泣いているんだから早く慰めなさいよ!

「ねぇ!こんなに酷い怪我をしているんだよ!?」

痛い思いをして傷付けた傷跡を見せるも反応は鈍かった。

何なの!

コイツ等!

きっと有住河の手先なんだわ!

私はクラスを飛び出して男テニの部室へ向かった。

私はお姫様なんだから、王子様が守るものでしょ!

出来の悪い乙女ゲーじゃないんだから早く助けに来なさいよ!





-SIDE クラスメイトA-


俺達のクラスに頭のおかしい奴が来た。

いや、俺達のクラスに転入してくるのはどこか変な奴ばかりだ。

今回は前回よりも輪に架けて凄い奴だ。

何ていうか自分が一番って思い込んでいる。

イケメンしかまともに話をしない奴の渾名はビッチ。

そんなビッチが俺のクラスメイトである有住河ありすを標的にした。

有住河は唯一男テニの奴等と友人関係にいられる不思議な奴だからか、ビッチも嫉妬したんだろう。

てかさ、嫉妬するのもお門違いじゃね?

だって有住河と男テニの間に甘い恋愛感情なんて一切ないからな。

にしても有住河がビッチを虐めって想像つかないんだけど。

殴るの面倒の一言で片付ける面倒臭がり屋の有住河だ。

殴る前に面倒だと踵を返すのが落ちだと思う。

自作自演の姫宮かなにクラスメイトが白い目で見ていた。

きっと男テニの部室にでも押し掛けるんだろうな。

ご愁傷様とばかりに俺は手を合わせた。





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