違う未来(みち)へ

-SIDE サイアリーズ+ゲオルグ-


あの内乱から一年が経過した。

リーシャがファレナの女王となり国を建て直していく。

視察と称し、私はゲオルグを連れてファレナ国内を回っている。

その内、国内が落ち着けば群島や赤帝に行くのも良いだろう。

「復興も此処までとは凄いな。」

もっと時間が掛かるかと思ったと告げるゲオルグにサイアリーズは

「リーシャが復興支援には力を入れているからねぇ。それにしても少し観ない内に医療機関や学校が出来ているなんて驚いたよ。」

姪っ子の自慢をした。

二人はブラブラと活気満ちた街を歩いて行く。

「おーい、お二人さん!」

露天商の親父に声を掛けられ二人が立ち止まれば

「アンタ等は旅の人かい?折角だからコレを食べていきなよ!」

紅玉のような林檎を差し出された。

「これは見事な林檎だねぇ。」

「美味そうだな。」

ゲオルグはお金を払い受け取った林檎をサイアリーズに手渡す。

「おうよ!品種改良をした一品なんだぜ。安くて美味い物が作れるようになったのもリーシャ女王陛下の支援のお陰さ。」

幸せそうに笑う人々を見てサイアリーズは思った。

姉上でも変えられなかった国を根底から覆し、人々に笑顔を齎した姪っ子は正義なのだ…と。

姉上達の死で成り立った平和だけれども、私は見届けて行こうと思う。

私は姉上を尊敬しているし、愛していた。

きっとその事を誰かに告げる事はない。

遥か海の向こうにいるもう一人の姪っ子は何を思うだろうか?

願わくば復讐ではなく、幸せを見つけて欲しいものだ。


美しい紅玉の林檎を口に含み私は祈る。

その未来(道)に幸多からんことを…



-SIDE ファールーシュ+ルセリナ-


僕はリーシャとの婚約を正式に破棄した。

リーシャは自分の心に気付いてないのかもしれない。

彼女の心の中にいるのは、僕ではなく彼女を支え続けたギゼルだから…

悔しいけど僕ではリーシャの傍に立つのは相応しいとは思えない。

リーシャと一緒にいるギゼルが自然なんだ。

「ファールーシュ様、休憩になさいますか?」

そっと気遣うようにお茶の用意をしてくれるルセリナに

「ありがとう。ルセリナも一緒に休憩しよう。」

僕は感謝の気持ちを述べた。

リーシャに抱くような狂おしい程の想いではないけれど、それでも穏やかな気持ちを彼女に持っている。

きっと恋はリーシャにしたので終わりなんだ。

それは何となく漠然とした勘で、ルセリナに抱く気持ちは親愛の情。

「リーシャ様の治世に置いてファレナはもっと発展していくのでしょうね。」

嬉しそうに微笑むルセリナに

「そうだね。ファレナに住まう者達が誇れる国であるようにしたいと思うよ。」

相槌を打った。

「それにしてもリーシャはギゼル殿とはまだなのかな?」

リーシャとも親しいルセリナに聞いてみれば彼女は少し困ったような顔をする。

僕がリーシャを好きだったという事を知って気を遣っているんだろうけど…。

「僕はリーシャが今でも好きだけど、彼女の幸せはきっとギゼル殿の一緒になる事だと思うんだ。それに初恋は実らないって言うしね?」

気にしないでと笑えば彼女もホッとしたようにそれでいて申し訳無さそうな表情(かお)で

「良い雰囲気ではあるとは思うのですが…それといった進展もないようで……」

ほうっと溜息を吐いた。

あぁ、あの二人ならそうかもしれないと納得してしまう。

どこか擦違っているんだよね。

「伯母上やアレニア達に協力して貰う必要があるかな…」

このまま彼女、結婚せずに僕に王座を継がせて隠居しかねないもの。

僕としては可愛い姪っ子や甥っ子に囲まれたいんだ。

初恋が叶わないんだからそれぐらい叶えて欲しいものだ。


僕等は優しい明日に向けてキラキラと希望を紡ぐ。


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追記

次で最終話です。

主人公と逆行組の結末編。

ファールーシュ王子は後にルセリナと結婚し、皇太子になり次代の王になります。

サイアリーズとゲオルグはずっと一緒に旅を続けます。







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