太陽の紋章

太陽

それは全ての命の源。

それは全ての始まりと終わり。

それは物事の中間地点。



-SIDE ギゼル-



害悪にしか成り得ないファレナの蛆が、と私は嘲笑した。

国政の大半を担っている彼女が欠ければ国が立ち行かない事だろう。

娘可愛さに彼女を自身の息子を姉妹を暗殺しようとする女王に民の信頼(心)は無い。

「被害は最小限に抑えて下さい。」

隣に立つ彼女は、敵として向かってくる彼等も民として見ているのだろう。

「えぇ、彼等もファレナの民ですからね。」

本当の事を言えば、愚王に組する者達を民とは思いたく無いんですが、とは口には出さない。

彼女が悲しむ全てを私は消し去りたいのだから…

私は兵に指示を飛ばし女王軍を制圧していく。

無駄に血が流れぬようにと細心の注意を払いつつ、逆らう者共には冷酷に処断した。

太陽宮で戦場に出てこない女王よりも自ら戦場に赴き指揮を執る彼女に兵達はどちらに心を傾けるだろう。

猛々しくも慈悲を持って戦を征する彼女に私はクツリと笑った。

やっと手に入る。

彼女が幸せである世界が…

あぁ、でも、その為には太陽宮に巣食う蛆を排除せねばならない。

ユーラム君の方も上手く事が運んでいる事だろう。

ギラギラと禍々しく輝く太陽の紋章の光は敵味方を飲み込むように無差別に飲み込もうとしている。

これも予想範囲内だ。

彼女を守る二つの紋章が蹴散らし、彼女の凛とした声が戦場に響く。


「慈悲無き王に太陽の加護無し!見捨てられた騎士よ、集え!民を蹂躙する王は最早王ではない!掲げよ!己の誇りに!ファレナの安寧は己が手の内にある事を!」


リーシャ・ファレナスの頭上に輝く太陽を見たと彼等は言う。




-SIDE リムスレーア-


太陽宮は、非道な逆賊に制圧された。

ミヤキス達と離れ離れになり、噂では処刑されたとか…

何て慈悲も涙の欠片も無いのじゃ!!

地に伏した母上の亡骸を抱き締めわらわは諸悪の根源を憎悪した。

母上は誰よりも素晴らしいのに何故このような非道な真似をするのじゃ!?

「逆賊めっ!」

王家の秘宝である黎明と黄昏の紋章だけでなく、象徴である太陽の紋章まで奪うとは!

忠臣であったミアキスも傍にいない。

だが震えて恐れるわらわではないぞ!

「卑しき身でありながらファレナ女王家の恩恵を踏み躙るか!リーシャ・ファレナス!?」

わらわの怒りも露ともしない女に苛立ちが募る。

「新女王陛下になんたる無礼っ!」

剣を抜こうとしたアレニアという女騎士にあの女は手で制止

「リムスレーア、そなたは本日を以ってファレナ女王国の王位継承権及び王籍抹消する。そなた及びそなたの子々孫々がファレナの大地を踏む事は赦されぬ。この地に戻ればその命は無いと思うが良い。」

傲慢にも告げられた言葉にわらわは怨嗟の言葉を吐いた。



「辱めを受けるぐらいなら死んだ方がマシじゃ!殺せ!」






-SIDE リーシャ-


私は伯母上であるアルシュタート陛下を討った。

その夫でありファールーシュのリムスレーアの父親であるフェリド閣下を含め大半の女王騎士を処刑し血を流す。

そして私は幼いリムスレーアの存在をファレナより消し去った。

彼女の身分は群島諸国の一般人。

死よりも残酷な事なのかもしれない。

私は玉座を見やる。

血に濡れた玉座はどれ程の哀しみと怒りと絶望を啜った事だろうか…

アルシュタート陛下を討った時、彼女が宿していた太陽の紋章が私に宿った。

そしてファールーシュとアレニアに宿った黄昏と黎明の紋章もまた私の両手に宿っている。

「リーシャ様、準備が出来ました。」

民の前で行う異例の戴冠式の準備が終わったと告げるアレニアに

「分かった。向かおうか…」

真っ直ぐと歩みだした。



この日、私は民の祝福を受け王位を継ぐ。








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