君は私の向日葵(たいよう)


-SIDE ギゼル-


白い、白い、真珠を鏤めた純白のドレスを纏うリーシャに私は歓喜した。

何度焦がれたことだろうか…

何度も繰り返したあの日々が、今やっと報われるのだ。

一度目の告白は笑い飛ばされ、二度目の告白は正気を疑われ、三度目の告白にはサイアリーズ殿下の事を引き合いに出されて散々だったけれども…

何度も愛を囁けば彼女は私の手を取ってくれた。

本意でなくとも内乱を起し、多くの民の犠牲の上に王位に就いた彼女は、私が約束を引き合いに出さなければ傍にいる事すら許さなかった事だろう。

一人茨の道を歩み、血が流れても泣き言一つ零す事も無く彼女は綺麗に笑うのだ。

「綺麗ですよ、リーシャ様。」

薄らと頬を染め恥ずかしそうな表情(かお)で私を見る彼女に

「リーシャ様、愛してます。例え、約束で貴女が私と婚姻を結ぶのだとしても私の心は貴女だけのもの。」

貴女の隣に立つならば地位も名誉も名声も全て捨てても良いのだと告げた。

「ギゼル、この言葉を貴方に告げるのはこれで最初で最後です。私は何度も愛を語る事も囁く事も出来ません。貴方が約束で私と婚姻を叶えると思わないで下さい。私は、私の意志で貴方を愛し、未来を見てます。私の一番目はファレナの民です。二番目がギゼル貴方です。」

まさかの言葉に驚けば彼女はクスクスと可愛らしい笑みを零し、真っ直ぐな意思の強い双眼で

「世界で二番目に愛してます。結婚して夫婦になって可愛い子供を作りましょう。私が貴方を幸せにします。だから私と結婚して下さい。」

プロポーズされた。

どこまでも私の予想を裏切る彼女に

「ふふ、あははは!参りました。勿論ですよ、リーシャ様。私も貴女を誰よりも幸せにします。結婚して下さい。」

華奢な身体をギュっと抱き締め宣言した。



民の祝福を受け私は光り輝く向日葵(宝)を手に入れる。


-SIDE アレニア-


リーシャ様とギゼル殿が婚姻されてから数年、ファレナは絶対君主制から立憲君主制へ移行していった。

国は内乱以前よりも繁栄を齎し、民に笑顔が増えていく。

長年の仇敵であったアーメスとも徐々にではあるが国交が回復し、新ファレナ皇国は発展を遂げていく事だろう。

「あえにあー」

「どこいーのー?」

リーシャ様とギゼル様のお子であるシュリム姫様とファールーシュ殿下とルセリナ嬢のお子であるライン王子の声に私はクスリと笑った。

幼いながらも聡明な子供達に将来が楽しみだと思う。

あの繰り返した日々は今になれば不思議だ。

この幸せが続けば良い。

いや、何を犠牲にしても続かせてみせる。

「あえにあーみっけたの!」

「みっけたの!」

キャーっとばかりに抱き着いて来る子供達を抱き留めた。

子供達の後ろからリーシャ様とギゼル様が子供達を優しい眼で見守っている。

「シュリム姫様、ライン殿下、お勉強は終わりましたか?」

日常(いつも)の遣り取りに子供達は胸を張って

「もちろなーよ」

「ほめてー」

ニコニコと向日葵のような笑顔を浮かべた。



幾度も未来を塗潰した私を悪だと罵る者がいれば罵れば良い。

私の太陽(主)はリーシャ様だった。

私の月(共犯者)はギゼル殿だった。

私の向日葵(宝)は姫君達だった。

私は未来をやっと紡ぎ出して行く…



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