黎明
それは全ての始まり。
それは全ての夜明け。
それは物事の原点。
-SIDE リーシャ-
私が目を醒ました時、全ては始まっていた。
まさか陛下が私の命を狙っていようとは考えたくも無かった…
あの幼き姫に王位を継がせたいなら一言継承権を放棄して欲しいと告げれば良いものを…
先々代の醜い王位継承争いで懲りたのでは無かったのか!?
私と親しくしていた者達は王宮から遠ざけられたと聞く。
遠ざけられただけならまだ許せる。
しかし、陛下は我が領地であるライトピアに兵を向け無抵抗な民を逆賊として蹂躙した。
この事をギゼルやアレニアから聞いた時は卒倒しかけた程だ。
哀しみと憎しみと憤怒。
そして疑問。
私という異分子が彼女を狂わせたのだろうか?
「ギゼル殿、手を貸して下さい。兵を起こします。」
後ろ盾のない今の私では太刀打ちする事も出来ない。
真っ直ぐと私を見る瞳は私の中の誰かを見ているようだった。
それが何故か哀しい。
そんな心に蓋をして
「全てが終わった暁には私が叶えられる物であれば、全力で叶えましょう。」
紡ぐ契約の言葉を…
例えそこに私の死を望む声であっても私は甘んじて受けよう。
「分かりました。現在出兵出来る兵は1万といった所でしょう。向こうには軍師メルセス卿がいます。こちらの軍師と補佐を紹介しておきましょうか。」
部屋に入室して来た者達を見て私は唖然とした。
原作を知っているだけにギャップが何とも…
「お初お目に掛かります、リーシャ様。微力ではありますが我が知略は貴女に捧げましょう。」
知性溢れる双眼で真っ直ぐと私を見るユーラム・バロウズ。
キャラ変したの!?
と叫ばなかっただけ凄いと思って欲しい。
「初めまして、リーシャ様。兄と同様に私も精一杯お仕えさせて頂きたく存じます。」
優雅に礼をするバロウズ兄妹に満足そうな顔をするギゼル。
「私の名はリーシャ・ファレナス。此度の戦いはファレナの未来を左右するものになります。そなた達の意思しかと受け止めました。」
私は内乱を起すのだ。
震える手を握り締め私は命じる。
太陽の紋章対策として黎明と黄昏の紋章を奪う事。
サイアリーズ殿下、ハスワール伯母上、ファールーシュ王子の保護を優先させるように兵を派遣させた。
-SIDE サイアリーズ-
姉上は変わってしまわれた。
母上と同じじゃないかい。
ファールーシュの婚約者であり、次期ファレナ女王になるリーシャを姉上は暗殺しようとした。
毒を盛って…
娘可愛さに姪っ子のリーシャを手に掛けようとしたのだ。
正直、リムに王の資質はないと思う。
気に喰わなければ不敬罪、機嫌を損ねれば手打ちなんて日常茶飯事。
不敬罪になった者達や手打ちになり掛けた者達をリーシャが救い上げていた事に何故気付かないんだい!?
母上と同じく狂ったように嗤う姉上を見て、ファレナは終わりだと確信した。
このままでは王位継承権を放棄しててもファレナ王家の血を受け継いでいる私やファールシュ、ハス姉も命を狙われるだろう。
「アンタは、義兄上の傍にいると思ってたんだけどねぇ…ゲオルグ。」
ソルファレナを脱出する際に一緒に付いて来た女王騎士を見やる。
「確かに俺はフェリドに恩義がある。だが、人として王として陛下を俺は見限った。非武装の民を虐殺する王命を受けたフェリドも、だ。」
苦々しく吐き捨てたゲオルグの言葉に私は何も言う事が出来ない。
「私はあの子の所へ行くよ。アンタは国に帰りな。」
赤帝に帰れと告げれば
「フェリドの目をぶん殴って目を醒まさせるのも俺の役目だ。それにお前みたいな御転婆を一人で放っておけるか。」
意外な気遣いが返って来た。
「御転婆ってアンタ私を幾つだと思ってるだい!でも…まぁ、私も姉上を(刺し違えてでも)止めないとね。」
「で、何処へ行くんだ?」
ゲオルグの問いに
「東の離宮だよ。リーシャと合流する前に黎明の紋章をパチっておこうと思ってね。」
きっと姉上は太陽の紋章に手を出すだろう。
それでは遅いのだ。
真の紋章の力は人を狂わせると聞く。
今の姉上に強大な武器を与えるようなもの…
ならば唯一均衡を保つ黎明と黄昏のどちらかの紋章を手に入れなければならない。
黎明の紋章を手に入れ私達はリーシャの下へ訪れる。
リーシャは私達の来訪を文字通り待っていた。
全てを見通すように…
慈悲の姫と呼ばれるだけの深窓の令嬢ではなく、戦に立つ王の眼(覚悟)をした彼女。
私の右手に宿る黎明の紋章が歓喜するようにフワフワと光を放った。
紡がれる幾もの未来。
見せる、視せる、魅せる、観せる、定まらない未来。
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追記
MY設定入ります!!
黎明の紋章は未来を司ってます。
サイアリーズ様は仮継承者です。
本当は王子と迷ったんですけど、今後の話を繋げるのにサイアリーズ様にしました!
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bkm