「ツナ、奈々さんも心配してるわ。お家に帰ろう?」
如何にも心配と云った表情(かお)で俺に馴れ馴れしく話し掛けて来る神野マリア。
その偽善者っぷりの態度が気持ち悪い。
「そーだぜ。マリアや奈々さんを困らせたらダメだと思うのなー」
ニコニコと何も考えて無い山本が俺に睨み付けた。
神野マリアに惚れてるんだっけ?
馬鹿馬鹿しい。
「沢田、10代目の手を煩わせんな!」
その女の犬に成り下がったわけだ。
以前は俺を10代目だとウザイぐらい勝手に盛り上がってたっけ。
その変わり身の早さにウンザリするよ。
「今日はハンバーグなの。楽しみでしょう?」
神野が伸ばしてくる手に俺は反射的に身体を後退させた。
俺の居場所を奪っておいてそんな言葉が良く吐けるね。
俺が暴言を吐く前に
「神野マリア。汚らわしいから綱吉に触れないでくれるかい。」
凛と済んだソプラノが険を滲ませ遮ったハルキさん。
「テメェ!10代目に何て口の利き方だ!!」
獄寺君がハルキさんに掴み掛かろうとした。
ハルキさんは自然に獄寺君の手を叩き落し
「躾がなってないね。キャンキャンと吠える駄犬のようだ。私は君には用はない。そこにいる馬鹿女に綱吉に触れるなと言っただけだ。」
山本と獄寺君に守られるようにしている神野マリアを一瞥する。
「おいおい、橘それは酷いんじゃないか?」
山本の険を帯びた視線にハルキさんは怯む事無く
「酷いのはお前等の頭だろう。」
溜息を吐いた。
「橘さん、どうしてそんな事を言うの?それにこれは私とツナの問題なのよ。関係ない橘さんが出しゃばらないで欲しい!」
神野マリアの言葉に俺と京子ちゃんの機嫌が一気に急降下する。
こう云うのをKY(空気読めない奴)なのかと一人納得してしまった。
京子ちゃんが大丈夫と心配そうに気遣ってくれる。
大丈夫、だってハルキさんこそ俺達の世界。
ハルキさんは神野に
「神野マリア。気安く綱吉の名前を呼ぶな。綱吉と京子は私の家族だ。それを侵す事あらば相応の覚悟をしておけ。徹底的に潰させて貰う。」
殺気を放った。
まともにハルキさんの殺気を喰らった三人は呆然と立ち尽くすだけ。
とても滑稽に見えた。
何事も無かったようにニッコリと微笑むハルキさん。
誰よりも美しいと思うんだ。
「綱吉、京子もう此処は用済みだ。お家へ帰ろう。」
ハルキさんの言葉に俺と京子ちゃんは荷物を纏め教室を出る。
ハルキさんの圧倒的な存在感・畏怖に魅せられた者も多いはず。
俺の感だけどね…
ハルキさんは、世界を統べる覇者だと思うんだ。
これで一つ神野マリアの世界が崩れて行く。
俺はクツリと嘲笑った。
<世界を幾度と語部をした元・少女には矢張り敵いませんでしたか。ふふふ、神野マリアはどこまで足掻いてくれるのでしょう?愉快(たのし)みですね? 著者:語部少女>
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