-SIDE リボーン-
コツコツコツと軽やかに響き渡る硬質なヒールの音にリボーンは眉を寄せた。
腐ってもボンゴレのアジトに警報一つ引っ掛らずに侵入者を許すとは!
しかもマリアは継承の儀式の最中だ。
ドーン
っとブチ壊された扉から青を基調とした服を纏った者達が数人入って来た。
「お久しぶりだね、アルコバレーノ!あぁ、紛い物の神野はアレの中かい?」
クツクツと妖艶に笑う橘ハルキの登場に
「どうして此処が分かった!?」
銃を向け低く威嚇すれば
「そんなの簡単な事でしょ?」
橘の代わりにニッコリと笑顔で答える笹川京子。
その瞳に添える冷たさは、昔の彼女からは想像出来ないだろう。
「内通者がいるってことぐらい念頭に入れておかないとね。」
ボンゴレも地に落ちたものだ!と至極愉しそうに嗤うダメツナだった元・教え子。
「ダメツナ…てめぇ、何故そんな奴の所にいる!!」
戻って来いと暗に促せば
「一度俺を見捨てておいてその言い草かよ。何より自分より格下だと思っての発言に苛々するね!死ねば良いのに!」
嫌悪と憎悪の眼で俺達を射抜いた。
綱吉の言葉にバジル達が同意し
「神野マリアをボンゴレ10代目に添えた時点でボンゴレ滅亡は確定していたんですから仕方有りません。」
骸が良い笑顔で毒を吐き
「害虫駆除しないとね。」
雲雀がリングに火を燈し匣を開閉した。
それが合図だったのだろう。
橘ハルキだけは事の成り行きを見守っているが、他の者達は武器を持ち嘗ての友や仲間だった者達を始末していった。
百戦錬磨の手だれと謂えど、俺は奴等の前に跪く事になる。
朦朧とした意識の中でボンゴレが誇る雲の守護者エステル・ヒルハインツが
「お待ちしておりましたわ、ハルキ様。」
ウットリとした表情(かお)で橘ハルキに跪いた。
その姿はまるで忠誠を誓う騎士のようで、俺は己の失態に舌打ちしたくなった。
「この茶番をそろそろ終焉(おわ)りにしないとね。エステル、最後の仕事をしてくれるかい?」
愉悦を含んだ笑みを浮かべる橘に
「御意。」
エステル・ヒルハインツがマリアを取り巻いていた雲を拡大させ橘達ごと飲み込んだ。
最期に聞こえたのはマリアの悲鳴のみ…
その後の事は俺は視る事が出来なかった。
<幾多ある平行世界で必ずしも主役が勝つって事は御座いませんのよ。10年経過して死を迎えた彼女の結末が多い覆る事なんて理不神が許しませんわ。だってツマラナイから棄てられたのですから! 著者:語部少女>
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