シレネ | ナノ




この気持ちが作為的なモノであっても俺にとっては本物なんだ。



神野マリアが転入してから俺達はおかしくなった。

レギュラー全員が会った一日目に恋に落ちるなんておかしいだろ?

マネージャーを募集していない周知の事実を捻じ曲げてマネージャーとしてコートに立っている時点で気持ち悪い!

香水と交じり合った果物が腐ったような甘ったるい臭いに吐き気がした。

似合わない化粧に貼り付けたような笑顔。

猫撫で声で媚を売る姿を見てミーハーだと解りきっているのに口に出るのは神野を喜ばす言葉だけ。

気持ち悪い。

気持ち悪い。

気持ち悪い。

吐き気がした。

纏わり疲れる腕から精神が肉体が腐る感覚に陥った。

神野の気を引こうと練習しなくなった仲間達。

俺達が築いた絆がバラバラになっていく。

違う。

違う。

違う。

こんな未来を夢見てコートに戻ってきたわけじゃない!

気休めで良いからと花壇に走った。

「Ave Maria, gratia plena,

Dominus tecum,

benedicta tu in mulieribus,

et benedictus fructus ventris tui Jesus.

Sancta Maria mater Dei,

ora pro nobis peccatoribus,

nunc, et in hora mortis nostrae.」

透き通るようなソプラノで歌われた唄が纏わり付くような空気を取り払ってくれた。

神野の気持ち悪い存在を払拭してくれる清浄な空気。

どこでもいそうな少女。

でも神々しい雰囲気を醸し出す彼女。

「助けて」

と伸ばしたてを振り払うことなく掴んでくれた彼女。

ハルキの後ろで揺れるシレネの花が笑った。

俺はハルキに依存する。




<シレネ、花言葉で偽りの愛。何処か言いえて妙ですね。でもご存知ですか?偽り続ければ本物になると謂う事を! 著者:語部少女>




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