シレネ | ナノ




-SIDE 幸村-


ハルキはとても綺麗。

着飾らない容姿は人並みだけれども着飾れば周囲を魅了出来ると思う。

そしてハルキの持つ独特な雰囲気。

言葉で表すなら清浄・清廉だと思う。

ハルキはとても聡い。

周囲はハルキがとても優しいと思っているけど、ハルキの本質は俺に似ているんじゃないかな?

自分の敵と認識すれば容赦はしないだろうし、人に関心を持つ事もない。

気紛れに関心を寄せ気に入れば甘やかすような人。

俺は野々宮が嫌いだ。

ハルキを独占するから!

この世で一番嫌いなのは神野マリア!

ハルキが唯一関心を持っている存在だから許せない。

あぁ、殺してしまいたいよ。

駄目、ダメ、だめ!

折角取り付けたハルキとのデートにあんな奴らの事なんて考えるなんて馬鹿馬鹿しい。

橘を待っている俺に群がるブス共に俺の機嫌が悪くなった。

「ねぇ、お姉さんとお茶しない?」

猫撫で声の化粧ブス達に

「待ち合わせしてますので。」

遠回しに断ると

「えーそんなの放っておいて私達と遊ぼうよ〜」

よっぽど自分に自身があるのか胸を押し付けるように腕を絡めてきた。

トイレの芳香剤のようなキツイ臭いに俺は思わず顔を諌め腕を振り払った。

「彼女と待ち合わせをしているのでお断りします。」

ハルキよりも自信があると言いたいのか目の前のブスは

「彼女よりも私達の方が気持ち良〜くさせてあげれるよぉ?」

媚を売ってきた。

好い加減キレそうになった時

「私の連れを誘惑しないでくれるかな?おばさん。」

コツコツと優雅にヒールを鳴らして向ってくるハルキに見惚れた。

普段化粧しない分、薄らと施された化粧が逆に綺麗に映える。

「待たせてしまったようで悪かったね、幸村。」

洗練された優雅な動作にブス共は分が悪いと感じたのかそそくさと逃げた。

「ハルキを待つのは楽しかったし、約束の時間よりも早いよ。」

俺の言葉にハルキは苦笑し

「そう言って貰えると助かる。」

フンワリと笑みを零した。

日溜まりのような微笑に俺は顔を赤くなってないか心配になる。

ハルキは俺の手を取って歩き出した。



-SIDE ハルキ-


幸村に誘われて遊びに出掛けることになった。

うん、幸村の属性って猫かな?って思ってたけど犬だったようだ。

その辺の女の子よりも可愛いからお姉ちゃんは心配になるよ!

神野の呪縛?から解き放ってから何故か懐かれた。

理不神のハッチャケた注文に応えるべく手駒は多い方が良いし、幸村は神野の王子様の一人でもあるから私としては是非ともキープしておきたい。

そんな中で振って沸いたお誘いに親睦を深めるのも良いかと了承すれば抱き付かれて喜ばれた。

遊びに行く前日にデートかぁ!と理不神に散々揶揄われたけれども。

理不神が服や小物、化粧品等を準備していた事に私はドン引きしたね!

きっとどっかでニマニマと状況を楽しんでいるのだろう。

ストーカー!

そんなこんなで幸村との待ち合わせ場所に15分前に行けばもう奴は着ており、キツメの大学生らしき女性陣に囲まれていた。

遠回しのお断り文句と絶対零度の圧力を物ともしない猛者に私は奴等は勇者だと思う。

このまま幸村を見捨てたら絶対に後が怖い為、仕方なく幸村に近付き

「待たせてしまったようで悪かったね、幸村。」

引き攣った笑顔を浮かべ様子を伺った。

文句の一つでも言われるかな?って思ったら

「ハルキを待つのは楽しかったし、約束の時間よりも早いよ。」

幸村はニッコリと花を飛ばすような可憐な笑顔で許してくれた。

「そう言って貰えると助かる。」

私は魔王と云う認識を改めようと心に誓う。

幸村をハイエナ(女共)から連れ出し予定していた美術館等を巡って時間を潰した。

途中、私に突き刺さるような嫉妬と羨望の視線が集中したのは言うまでもない。

まぁ、これだけ極上な男が一緒に歩いているのだから仕方ないんだけどね。

幸村は結構博学で話のテンポも良く割りと楽しい時間を過ごす事が出来た。

帰り際に小さな協会で結婚式が行われており

「ハルキ、覗きに行こう?」

と可愛くおねだりされ了承してしまった私は悪くない!

純白のドレスを着た女性は突然の乱入者である私達を微笑ましく歓迎してくれた。

「あら、可愛らしいカップルね。」

な〜んてお世辞まで付けてくれて。

結婚式の目玉であるブーケトスに何故か幸村が参加していた。

私?

するわけないじゃん。

ブーケは綺麗に弧を描いて幸村の手元に落ちた。

何か陰謀を感じる。

ブーケを欲しがった女性陣としては年下の、ましてや美少年に掻っ攫われた為に文句も言えなかったのだろう。

花嫁さんが

「ふふ、次は貴方達の番ね。」

超爆弾発言をかましてくれた。

違うと否定する前に

「はい、幸せになりますね。」

と良い笑顔で肯定。

あっはー?

と既に意識半分飛んでいた私の唇に柔らかく温かい何かが触れた。

ワッと沸く会場に私が幸村にキスされた事を認識した。

う〜ん、幸村はスキンシップの好きな犬なのだと思う。

こうして幸村とのお出掛けは幕を閉じた。



可愛い君は僕のモノ!



<本当に捕らわれたのはどちらなのでしょう?歪んだ愛もまた一驚と云う事でしょう。初々しい?ふふ、愛という名の牢獄が待ち構えてましてよ。 著者:語部少女>




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