シレネ | ナノ





-SIDE 仁王-

橘は不思議な女じゃ。

橘の評判を聞けば誰もが優しいという評価を下すが、アレは優しい女じゃなか。

「冷たい女じゃな。」

柔らかく笑う橘に俺が橘に対しての印象を述べると

「仁王は面白い男だね。」

気を悪くした様子もなく嗤った。

「のう、幸村に何を吹き込んだんじゃ?あれだけお前さんを妄信する姿は正直キモイぜよ。」

橘と関わりだして幸村の行動は狂っていった。

まぁ、それに気付いたのは今のところワシぐらいじゃろうが…

「何もしてやいないさ。そうだね、言えるとしたら私との出会い方が最悪だったんじゃないかい?」

驚喜

狂気

狂喜

兇器

凶器

狭軌

きょうき

キョウキ

酷薄で冷たい微笑を浮かべる橘の瞳に混じった感情に怖れを抱いた。

それと同時に幸村が橘に堕ちた気持ちが理解出来た。

そう美しいのだ。

一般的には普通の容姿にしか思えない橘が、誰よりも美しく見える。

「私は誰よりも極悪非道で冷血漢な女だと自負しているよ。」

コロコロと鈴を転がすような声で

「君達が少しでも好意を抱いていた神野さんの破滅を願って止まない女だから、ね。」

艶やかに嗤った。

成る程、幸村が橘に溺れるのも無理はない。

橘は魔性だ。

ワシ等に掛ける情は必要であれば程度だろう。

彼女の中を占めているのは、神野マリアと云う事だ。

アノ程度のランクの女が橘ハルキを独占しているのに対し苛立ちが沸く。

あぁ、ワシも捕らわれた一人になったかもしれん。

橘の中で描かれている終焉はどんなのだろうか?

是非とも橘の目線で見てみたいもんじゃ。

「愉しみにしとーよ。」

橘にそう告げれば

「任された!」

いつもの仮面(えがお)で答えてくれた。

あぁ、本当に愉しみじゃ!


<一人、また一人と捕らえて行く元・語部少女の手腕故でしょうか?それとも彼女の中にある狂気に魅せられたからなのでしょうか?どちらにせよ役者は踊るのです! 著者:語部少女>








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