人殺し!
殺人者!
人でなし!
ろくでなし!
何故私が罵られなければならないの?
いつものように学校へ向ったら次々と浴びせられる罵倒に私は眉を寄せた。
私は神野財閥の娘なのよ!
アンタ達みたいなモブを一瞬で路頭に迷わせることだって可能なの。
橘ハルキの事は神野財閥の力で何とか出来たし、誰も私が屋上から突き落とした場面を見ていないはず。
なのにどうして?
心無い誹謗中傷に苛々が募った。
考え事をしていた私の前に私の王子様達を奪った野々宮ゆいが私の頬を叩く。
「アンタなんて最低!ハルキちゃんが学校に来れないのにどうしてアンタが学校に来てるのよ!アンタが屋上から落ちれば良かったのに!この人殺しっ!」
どうして私がこんなレベルの低いモブキャラに叩かれなければならないの!?
殴り返そうとして振り上げた手は誰かに止められた。
止めた奴を睨もうと振り返ると精市が私の腕を握っている。
「せ、精市…私、野々宮さんに叩かれたの!」
嘘無きすれば私の味方になる筈の精市が凍ったような冷たい眼で
「君が死ねば良かったのに、どうして生きてるの?」
と想像していた言葉と違う言葉を告げられた。
どうして?
「何で私が死ねば良かったって言うの?私は皆を愛してあげているんだよ!何が不満なの?橘なんて死ねば良かったのに!」
ギリリと握られた腕が悲鳴を上げる。
「…そう、それが君の本心なんだ。へぇ、今まで散々人を殺してきた人殺し!ねぇ、知ってるかい?君がハルキを屋上から突き落とした全容を学校全員だけじゃなく世界中の人間が知っているのを!」
精市の眼に宿る怒りと痛みと嘘のような言葉に私は固まった。
だってあの場所には誰もいなかったし、盗聴器や映像を撮れる物なんて無かったわ!
「ど、どうしてそんな嘘を言うの?」
そう、まだ証拠なんて無いんだから!
「最低じゃの。」
雅治が私を蔑むように見た。
「本当ですね、インターネットの動画サイトで見れますよ。」
比呂士が携帯を取り出しアノ日の映像を再生する。
どうして?
どうして?
どうして?
そんなモノがあるの!!
「嘘!うそ!ウソ!そんなの偽物だもんっ!私じゃない!」
声を張り上げても周囲からは冷たい視線だけ。
「嘘じゃありませんわ。だってその映像は本物でしてよ。それに色々と前の学校で人殺ししていらっしゃるのも周知の事実ですわ。人殺しが学校にいたなんて嘆かわしい!そういえば麻薬もしていらしたのでしたわね。」
ファンクラブの会長と言われていた女が私を睨み付け
「貴女のような人を世間では何て言うかご存知?」
嘲笑った。
何て屈辱なのかしら!
こんな根も葉もない冤罪を着せるなんて許せない!
「罪人、でしてよ。そろそろ警察が来る頃かしら?貴女はもう立海の生徒ではなく、学校へ侵入した犯罪者。貴女のような方はこの学校に在籍していなかったの。皆様、そうでしょう?」
周囲にいた生徒、精市達も頷いた。
警官が私を拘束し連れて行くのに誰も私を助けてくれない!
「これは冤罪だわ!人でなし!」
と叫ぶ私に
「人殺しの分際で冤罪とかほざくなよ…」
誰かが呟いた声が届いた。
きっと神様が私を助けに来てアイツ等に天罰を与えてくれるんだから!!
<似非財閥のお嬢様ですもの本物の財閥のお嬢様と比べるまでもありませんわね。それにしても下品が表に出過ぎですわ。それが彼女の本性だったのでしょう。それにしても助けてくれると信じてるのが凄いですわね。救いなど在りはしないのに!絶望は貴女だけでしてよ。 著者:語部少女>
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