-SIDE ハルキ-
精神病棟の一室にて神野マリアが収容されている。
アレから数年の月日が経った。
ガラス越しに彼女を見る。
「お久しぶりだね、神野さん。まだ妄想を呟いているのかい?」
クツクツと嘲笑すれば神野がギロリと私を睨み付け
「アンタのせいよ!私は神に選ばれた存在なのにどうしてこんな仕打ちを受けなければならないの!?」
と甲高い声で罵倒する。
「神に選ばれたってどこの中二病なんだい?君がトリップしたと誰が信じるんだい?戸籍もあるのに?」
戸籍さえ無ければ元の世界へ還れたかもしれないのに自分で居場所を消しておいて何を今更!
「私は別の世界から来たのよ!神様に会って特典を使ってね!此処から出たら真っ先にアンタを消してやるんだから!!」
あぁ、やはり君はバカなのだね。
私と神野を隔てたガラスを一撫でし
「私を殺そうとした犯罪者風情が何をするのかしら?また私を殺そうとするのね。」
嗤う。
「そうそう報告だけれど、神野財閥は完璧に潰れたよ。君も後ろ盾が無くなってしまったね。」
そう、一重に精神病患者には似つかわしくない病棟に入っていられたのは神野財閥の恩恵だからだ。
私の言葉にそんなはずはない!と喚く彼女に
「君が此処に容れられてから数年、私が何もしなかったとでも思うのかい?お目出度い頭をしてるね。イギリスの名家であるファントムハイヴ家に嫁ぐ事になったのだよ。」
歌うように告げれば
「有得ない!嘘よ!だってこの世界にファントムハイヴなんて存在しないわ!嘘吐きっ!」
全否定した。
そうだね、君が望んだのは『テニスの王子様』の世界だもの!
でもね、理不神が支配する世界に絶対などないのだよ。
「…そう、でも事実なのだよ。君は一生地下で家畜として私に飼われる日常が待っているのさ。」
さぁ!
私に絶望を見せておくれ!
-SIDE 神野マリア-
私は神に選ばれた女なのに!
容姿も地位も名誉も権力も私の物だった!
それを奪ったのは橘ハルキ。
絶対に復讐してやる!
勝手に精神病患者なんかにして赦せない!
そんな毎日を送ってたら橘ハルキがノコノコと私の前に姿を現した。
何て厚かましいのだろう!
そして私を嘲笑い嘘を並び立て帰って行った。
その数日後、私は目隠しをされまるで荷物を運ぶかのように何処かへ連れて行かれた。
何処かの地下牢に私は放り込まれ
「此処から出して!私は神野財閥の娘なのよ!こんな無礼が許されるとでも思っているの!?」
と訴えても聞こえるのは橘ハルキの嘲笑のみ。
薄暗い部屋には簡素なベットと異臭を放つトイレのみ。
こんな場所で私がどうして過ごさなければならないの?
どうして神様は助けてくれないの?
私は何も悪くない!
悪いのは橘ハルキ!
早く、早く、早く、夢から醒めて欲しい。
<夢?これは現実でしてよ!此処まで転落する人生を披露された彼女はある意味お莫迦なのでしょう。それとも元・語部少女相手にしたのが悪かったのでしょうか?どちらにせよ、これが本当のお先真っ暗と云う事ですわ。 著者:語部少女>
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