-SIDE 丸井ブン太-
橘が病院に搬送された。
それは学校全体に広まった真実。
屋上から突き落とされた橘は、幸いにも花壇の花々がクッションになって一命を取り留めたらしい。
橘が突き落とされたと聞いて荒れたのは幸村と赤也だった。
幸村は橘の事が好きだったし、赤也は橘の事を慕っていたからな。
神野が橘を屋上から突き落としたという噂が瞬く間に学校全体に広がり今やアイツは学校全体の敵になった。
俺達に助けを求めて来た時は唖然としたものだ。
普通、自分で何とかするもんだろ?
しかも橘の親友とか公言しておいて
「あのね、私…野々宮さんに虐められてるの。」
と宣った。
有得ないだろ!
幸村や赤也が神野を殴りそうになったのを慌てて止め柳がピシャリと神野を追い返した。
「何なんだアイツはっ!」
これ以上もない怒気を孕んだ幸村に俺は橘がファンクラブ会長と仲が良かったのを思い出し
「なぁ、ファンクラブの会長なら何か知ってるんじゃね?」
会う事を提案してみる。
「それは良い案だな。一宮は橘とも交友があったはず。」
柳の後押しで俺達は一宮に会うことにした。
-SIDE 一宮明子-
ハルキ様が神野に殺されかけた。
許せない!
赦さない!
幸いにも命を取り留めたけれども身体に大きな傷痕が残ってしまった。
そして心に深い傷を負わせてしまった。
私は何て不甲斐無いのでしょう。
「一宮さん、話があるんだけど良いかな?」
幸村精市の言葉に私は我に返った。
あぁ、彼もまたハルキ様を傷付けられて神野に怒りを抱いてる人だ。
でも、本を正せば神野をチヤホヤしていればハルキ様は無関係でいられたの。
それでも神野を徹底的に潰すなら彼等を利用しない手はない。
何故なら神野は彼等を自分の王子様と称した痛い奴なのだから!
「神野…についてかしら?」
神野の単語に幸村達の表情(かお)が歪んだ。
「神野マリアの噂は全部本当よ。」
一枚のCDを見せ
「この中にね、ハルキ様が屋上から落とされた動画と神野マリアの過去の経歴等が入っているの。」
淡々と事実を述べる。
「動画?」
柳の呟きに
「そう、動画…ハルキ様がね、遠からず神野マリアは私に何かすると察していらしたの。だから小型映像器を作って渡したのだけれど、まさか殺人未遂の現場だとは思ってなかったわ。」
立海の校章の刻印されているボタン型映像器を見せた。
ハルキ様を守れなかった私と貴方達。
どちらも同罪ね。
私は幸村にCDを渡し
「貴方達がチヤホヤしていたお姫様がどんな存在か知るべきだわ。」
私は私でするべき事があるのだから!
<断罪の剣は王子様に手渡され、嘗て栄光を謳歌したお姫様に振るわれることでしょう。 著者:語部少女>
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