野々宮さんと仲が良かった橘さん。
いつも一緒に居た彼女が野々宮さんの傍にいない。
子供っぽい野々宮さんを穏やかな表情(かお)で見守っている橘さんが日常の一部だったのに…。
最近、橘さんの傍には神野さんがいた。
橘さんと神野さんが一緒にいる場所を見る度に野々宮さんが悲しそうな顔をする。
そして勝ち誇ったような優越感を交えた表情(かお)で笑う神野さんと哀しみを隠して心配そう野々宮さんを見る橘さん。
「何かあったのでしょうか?」
柳生はポツリと呟いた。
「ねぇ、知ってる?神野が学校に圧力を掛けて橘さんの奨学金取り消しになりかけたらしいよ!」
バタバタと教室に駆け込んで来た噂好きのクラスメイトに反応する女子生徒達。
「橘さんって両親いないし、奨学金が無かったら学校通えないじゃん!神野ってサイテー」
「氷帝にいる友達に聞いたんだけどさぁ、関東の学校には通えないようにしたって噂だよ。」
口々に神野さんを批判する彼女達。
それが事実なら最悪だ。
「マジ?」
「大マジ!それにね、此処だけの話なんだけど…橘さんが神野と一緒にいるのは野々宮さんを守る為らしいよ。」
興味津々と彼女達の噂話に耳を傾けるクラスメイト達。
「どういうこと?」
「神野に従わないと野々宮さんの家にも同じように圧力掛けるって脅したらしいの!ほら、最近男テニに構われなくなったじゃない?」
「野々宮さんの方が何倍も可愛いし性格が良いもんねぇ。周囲から孤立させるのが目的ってことかー最低っ」
神野がモテない逆恨みの行動じゃんと憤る彼女達。
「やっぱり…そういう事なんだ。面倒見良いし、分け隔てなく優しいし、気配り上手な橘さんが、大事にしてる親友の野々宮さんの傍にいないのは、神野が圧力掛けたからってことじゃない?」
それなら話の筋が通る。
だがそれは憶測に過ぎず、一般人である自分で調べるには難しい事だと思った。
「柳君に相談してみましょうか…」
きっとこの分だと彼にもこの噂が届いているだろう。
<噂とは侮れないものですのよ。例えそれが事実でなくても真実になる得るのですから!噂の出所?ふふふ、それは秘密でしてよ。さぁ、警告しましたわ! 著者:語部少女>
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