ヒロインの務めって知ってるかい?
ずばり、愛される事。
あぁ、勘違いしないでね。
彼女のように偽りの歪んだ愛ではないのだよ。
あれは所詮紛い物。
ふふ、ゆいちゃんは本当に良い動きをしてくれるね。
少しの切欠で着実に男子テニス部に関わってくれるのだから!
あぁ、男子テニス部に囲まれているゆいちゃんを睨んでいる神野の顔が酷く歪んでいるよ!
あっは!
王子様が見ている事に気付かないなんて滑稽だね?
「野々宮、此間借りていた本だが続きはあるだろうか?」
柳の言葉にゆいちゃんが
「あー続きはハルキちゃんに貸しちゃってるんだよね。ハルキちゃん、アレってもう読めた?」
ゆいちゃんの問いに私は
「あぁ、もう読めてるよ。今日は持って来てないから明日にでも返すね。それとも直接、柳に渡した方が良いかい?」
返却の意思を表した。
柳としては、ゆいちゃんから手渡しして欲しいだろうけど障害(わたし)があった方が(理不神が)面白いだろう?
まぁ、ゆいちゃんの性格からして私からの返却を希望するのは目に見えてるけどね。
「う〜ん…ハルキちゃんのお勧めの本も借りたいし…」
うんうんと悩むゆいちゃんに苦笑した。
「それなら橘が柳に本を渡して、ゆいが橘から本を借りれば良か。一緒に済ませた方が効率的じゃろ?」
白髪…じゃなかった仁王の言葉にゆいちゃんがフニャっと笑顔で
「それ良いね!じゃー三人で交換とかどう?」
名案とばかりに天使の笑顔を振り撒く。
ふっは、ゆいちゃんは天然さんだねぇ。
「ふふ、私は別に構わないよ。」
クツリ、クツリと神野とゆいちゃんの差を見せ付けた。
私かい?
私は脇役だよ。
Pipipi〜♪
とメールの着信音が鳴った。
おや、まぁ…神野の王子様の一人からのお誘いじゃないか!
このメールを神野に見せたらどうなるかな?
「ゆいちゃん、悪いけど連れが待っているようだ。私はそろそろお暇させて頂く事にするよ。」
ゆいちゃんの頭を一撫でし
「じゃあ、君達も…また、ね。」
ヒラヒラと手を振って幸村との待ち合わせ場所に向った。
<嫉妬に歪む顔ほど醜いものはありませんわね。神野マリアさん、王子様が貴女への恋慕から冷めてしまわれたようですわよ。だ〜い好きな王子様の心は誰に向っているのかしら?知ってまして?ヒロインは誰ともくっつかないことを! 著者:語部少女>
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